大弦小弦
(2007年11月12日 朝刊 1面)
県立南部医療センター・こども医療センターで、洗剤を飲料水と間違えて患者に飲ませるという事故が起きた。同じようなペットボトルに入っていて区別ができなかったという。
こんなことがあり得るのか。患者は数回にわたって洗剤を飲まされた。飲料水と洗剤という異質のものが似た容器に入っていたという。器具や設備の管理面で組織としての基本的な体制に疑問を抱かざるを得ない。
日本医療機能評価機構によると、全国で医療事故につながる恐れがあるヒヤリ・ハット事例は二〇〇五年が約十八万三千件、〇六年は十九万五千六百九件。うち〇五年は77%、〇六年は74%が、看護師によるものだった。
危機管理の思想として「ハインリッヒの法則」が知られている。一件の重大災害(事故)が発生する背景には、二十九件の軽傷事故と三百件のあわや事故につながりかねない問題がある、という考え方だ。今回の件は、患者の容体が安定しているとはいえ、重大事故ととらえる必要があろう。
どんな完璧な人でもミスはする。組織の中で、一人のヒューマンエラーをどう皆でカバーするかという総合力が問われる。重大事故につながらないよう小さなミスの芽をどう摘み取るのか、病院のみならずさまざまな組織で日々の努力が続いている。
ミスを根絶するノウハウを確立すると同時に、ミスをした人に対するケアも組織力を高める上で忘れてはなるまい。(平良哲)
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