鉄道遺産PRに燃える団体職員、創作家具工房を営む夫妻、ドイツ出身の翻訳家夫妻、宿泊施設を経営する夫妻、トマト栽培に励む青年、自然保護団体の会長―。十月下旬から津山市民版、美作版、真庭圏版に随時掲載している「ふるさと作州再発見 わが新天地」で紹介した人たちだ。
この企画は、作州(美作地方)で生まれ、ずっと暮らす人は見過ごしがちな地域の魅力を、Iターン、Uターンし作州に根付こうとする人の“外からの目”で語ってもらおうという狙い。あと数人登場いただく予定だ。
掲載した六回を振り返ると、新天地を求めた理由や経緯、その後の暮らしなど各人各様だが、新天地への満足感や愛着、夢を持ち続ける姿勢など、通じるものがある。豊かな自然や文化、人情、そして季節感に富み悠々とした時の流れ…。生活の手応えとともに地域の魅力が伝わってくる。
作州の大半は「格差社会」では負け組とされる中山間地だ。地域を支えてきた農業も衰退の一途。先行きも厳しいと感じていたが、彼らの姿は「そんなことないよ」と語っているように思えた。
環境破壊、異常気象、農産物価格高騰、食の安全問題…国内外で続く異常事態は農山村や農業の重要性を痛感させてくれる。ちなみに一九九二年度に二十九人だった岡山県の新規就農者は増加傾向が続いて二〇〇二年度に百人を突破。以降百十人前後で推移している。
「田舎が不便と言うのは、都会の不便さを分かっていないから」。ネットを活用し翻訳や趣味に励み、標高四百五十メートルの庭で雲海や夕日を眺めながら語らう日々というドイツ人夫妻の言葉だ。
(津山支社・井谷進)