三百五十年前に江戸の大半を焼き払った明暦の大火について記した岡山藩主池田光政の書状が見つかった。岡山藩邸も被害を受けた。
火事は昔も今も命と財産を脅かす。岡山市消防局管内でも今年、火災発生が平成以降最悪ペースだそうだ。消防局は注意呼び掛けに力を入れている。十五日まで秋の火災予防運動。
市中心街の山陽新聞社本社ビルで八日にあった消防訓練にはヘリコプターも飛来し、頼もしかった。しかし近代消防にも限界はある。岡山県北にいた時、山奥の民家火災で現場に駆けつけると、家は完全に焼け落ちていた。
「道路事情や水の便が悪くて持てる力を発揮できないことがある。悔しい」。消防署員の言葉と、立ち尽くす家人の表情が十数年たった今も忘れられない。火を出さないのが一番。一人一人の用心に勝るものはない。
東京消防庁のホームページで、住宅防火の「意識度」を自己診断できる。家電製品の裏側がほこりまみれ、たこ足配線、ストーブと家具を近付け過ぎなど、どこの家にもありそうな火災予防の盲点が並んでいる。お年寄り世帯の防火支援も急務だ。
全国統一防火標語の二〇〇二年度は「消す心 置いてください 火のそばに」だった。〇三年度の「その油断 火から炎へ 災いへ」も記憶に残る。本年度の標語「火は見てる あなたが離れる その時を」も鋭い。