改正被災者生活再建支援法が成立した。自民、公明両党と民主党の共同提出法案で、今国会で成立した法律の第一号である。これまで認められず被災者たちが強く要望していた住宅本体の建設費用などにも支援金が使えるようになる。救済へ前進といえよう。
現行の被災者支援法は、阪神大震災をきっかけに必要性が認識され、地震や台風など大規模な自然災害の被災者に現金支給を可能にするため、一九九八年に議員立法で制定された。当初は年齢や年収などの要件を満たした全壊世帯に対する生活必需品の購入費として百万円を上限にしていたが、その後大規模な半壊世帯にも対象を拡大し、また、がれきの撤去など居住関係費にも広げ、支給限度額を最高三百万円に引き上げた。
今年六月末までに起きた二十九件の災害で、計約一万二千九百世帯に約百三十億円が支給された。日本は災害列島であり、いつどこで災害が発生するか分からない。被災者が立ち直るには日常生活を送る住宅再建は重要な課題だ。
自然災害の被災者救済をめぐって国は、典型的な個人財産である住宅の再建に税金投入はできないとかたくなに主張してきた。現行の被災者支援法は住宅の再建・補修など住宅本体の再建支援費は含まれていない。
現行法は、被災者の生活支援の大きな力になっていないと批判が高まっていた。所得や年齢などの制限も多く、制度の使い勝手の悪さに対する不満も出ていた。
改正法は、支給上限額は現行通りの三百万円に据え置いたが、使途の制限をなくしたことで従来は認められていなかった住宅本体の建設費用などに使える。世帯主の年齢と世帯年収による支給制限も撤廃した。
衆参の与野党勢力が逆転したねじれ国会で対立が続いていたが、国会召集から約二カ月でやっと歩み寄った。被災者の早急な救済を優先した結果だ。改正法の施行日は公布から一カ月以内に政令で指定するとしているが、今年発生した能登半島地震や新潟県中越沖地震、台風11号、台風12号の被災者にも特例措置を設けて救済する。
内閣府の試算では、首都直下地震が起き、最大で八十五万棟が全壊する最悪の想定の場合、支給総額は現行法だと約一兆二千億円だが、改正法では約三兆六千億円に膨らむとする。被災者救済は大切だが、巨額の財源をどう確保するかが課題になる。具体的な検討を与野党で始めなければならない。財源論議をおざなりにしては政治の責任は果たせまい。
会計検査院は官庁や政府出資法人などの二○○六年度の決算検査報告を政府に提出した。役所や大学、病院、自衛隊などでのずさんな会計処理は四百五十一件、総額三百十億円に上った。
内訳は、資産の評価ミスなど不適切な経理処理が二百六十億円で、税金や社会保険料の徴収漏れなどが五十億円あった。百一億円については、法令違反などがあり「不当」と指摘した。データの比較が可能な一九七八年度以降で件数は二番目に多い。
省庁別では、厚生労働省が六十二億円で最も多かった。架空残業やカラ出張による都道府県の労働局の不正支出は一億五千八百万円余りに上っている。長野労働局では、会計検査後に局長が関連文書の廃棄を指示していたことも明らかとなった。厚労省には職務規律の徹底が求められる。
「不正の温床になる」として政府が見直しを進めている随意契約は、各府省で計八万件、総額一兆三千億円に上っている。金額で契約全体の六割を占めた。公正性、競争性、透明性を確保するための改革が急務だ。特殊法人「日本中央競馬会」でも競争入札の可能な百七十九件(百六十五億円)が随意契約で行われ、競争契約の導入を指摘した。
福島、和歌山、宮崎県など昨年相次いだ官製談合の問題では、公正な入札の実施と不正があった際に契約に「違約金条項」を盛り込むなどの談合防止措置も求めた。
財政再建が叫ばれている折に、役所や公益法人などの公金への認識の甘さは一向に改善されていない。検査院の役割はますます重要だ。無駄遣いや不正はもちろん、税の効率的な使われ方などに厳しい監視の目を向け適正な予算執行につなげねばならない。
(2007年11月11日掲載)