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四季の話題(3)
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――ではこの際、出演料の話を聞かせてください。劇団四季の主演級の俳優には幾らぐらいの出演料が支払われているのですか。
浅利  普通はお話ししないのですが。

――では、保坂さんや石丸さんのケースだけでも教えてください。
浅利  仕方ありませんね。年収数千万円に達する俳優は数多くいます。石丸君や保坂君もこのグループです。

――そんなに支払っているのですか。
浅利  ええ。

――保証もしているのですか。
浅利  毎月決まった額が支払われるよう、保証しています。

――そうすると百数十万円の月給があるということですか。
浅利  年末に追加出演料が支払われ、更に所得が増えます。

――どのくらいの額ですか。
浅利  トータルで数千万円の収入になる。

――そんな恵まれた仕事でも辞めたいという人がいるのですか。
浅利  この仕事を続ける動機は収入だけではありません。そこが俳優の難しいところです。ただ我々は、実力に従って所得が増えるし又若い俳優にも生活の不安を感じさせないような経済環境を提供しています。

――こんなに安定した場所を簡単に放棄する俳優を見て、不愉快な気持ちになりませんか。
浅利  はじめは腹を立てていました。しかし57年もこの仕事をしていると、俳優の不思議な性癖に慣れてくるものです。「ああまたか」という思いです。

――浅利さんご自身は傷つかないのですか。
浅利  もちろん傷ついています。苦労して一生懸命育てた子たちですから。でもそのエネルギーを、新しい俳優を育てる力に振り替えます。

――ところで新人は育っていますか。
浅利  どんどん育っています。育っているのは新人だけではありません。ゲストで参加しているメンバーも、四季の水で洗われて良くなっています。

――例えばどんな人ですか
浅利  渡辺正君はキャラクターのある良い俳優です。最近渡辺君が演じている『アイーダ』のラダメス役は素晴らしい出来です。相手役の秋夢子君のアイーダも相当なものです。

――「四季の水で洗う」というのはどういう意味なのですか。
浅利  四季以外のグループには「方法論」が無いのです。言葉を明晰に話す「母音法」、そして体で声の「支え」を作る「呼吸法」。音程とリズムに対する厳しさ。この方法論に則って訓練すれば、その人のベストの状態に近づきます。見違えるようになります。

――ここの所、劇団「昴」や俳優座などから、たくさんの新劇俳優が四季の舞台に立っていますね。
浅利  四季の方法論に魅力を感じている人が多いようです。我々の門戸は常に開かれています。素質さえあれば、誰にでもチャンスはあります。

――『鹿鳴館』で清原を演じた昴の山口嘉三さんも好評ですね。
浅利  彼は、それほど器用な人ではありません。しかし四季で稽古を重ねて努力をするうちに、大きく伸びてきました。
――そうですね。
浅利  不思議なもので新劇では、先ず「気持ち」から演技を考えるのです。「感情移入」というやつですね。 日本の古典芸能、例えば能、歌舞伎、文楽、狂言などは、全て「言葉」から入ります。「気持ち」だけを感情的に表現するから、どうしても新劇では「言葉」の明晰さが失われます。

――その現象は新劇俳優だけですか。
浅利  いいえ。困ったことに全日本的な現象になっているのです。例えばテレビに出ている俳優たちを見て下さい。またアナウンサーの場合でも母音だけでなく必ず守らなければならない「長音」を伸ばさない。今夜のNHKの天気予報を聞いてみてください。「てんきよほー」の「ほー」が伸びていない人が多い。「関東地方」が「かんとちほ」と詰まってしまう。本来は「かんとーちほー」なのです。

――NHKに「母音法」を教えてあげたらどうですか。
浅利  昔、何度か指導に行ったこともあります。もう一度、教えに行く必要がありそうですね(笑)。

――そういえば、あの方も出ていますね。かつてアイドルとして活躍していた、芹沢秀明さん。
浅利  芹沢君はアイドルだったの?

――そうです。彼はテレビドラマや映画でも活躍していました。甘いマスクですし、声も良いし、素晴らしい俳優です。
浅利  彼も今、一生懸命、基本を身につけています。ここのところ著しく成長してきました。例えば『この生命誰のもの』の看護助手、田原洋介役もユニークで良かった。

――今は『魔法をすてたマジョリン』のオカシラスにチャレンジしていますね。コミカルな俳優に育てたいのですか。
浅利  ユーモラスな役やコミカルな演技が出来る能力が身についてくると、スタンダードな二枚目の演技に幅と奥行きが出ます。

――楽しみですね。
浅利  良い俳優に育って欲しいです。

――今はそうした新しい俳優の養成に力を注いでいらっしゃるのですね。
浅利  去るものは追わず、来るものは拒まず。

――でも、オーディションはすごい倍率ですよね。
浅利  申し訳ない。確かに来るものを随分拒んでいますね(笑)。

――浅利さんはこれまで、退団を希望する俳優を引き止めたことが無いそうですね。
浅利  もとは無名の若者から、僕が育てた人たちです。だから割り切って、諦めることにしました。

――退団後に、もう一度面倒を見て欲しいと望まれたら。
浅利  今、四季に参加している俳優には愛情を持って細かく目配りをしています。離れた人には関心が薄くなります。

――では退団者の出演する舞台はご覧にならない?
浅利  彼らへの関心は、辞めた瞬間で止まっています。四季に在籍し続けていたら、もっと伸びた人が多いと思いますが。しかし四季に残るためには、人間的な成長が必要です。劇団と共に生き、劇団の理念を信じる。個人プレーではなく充実した舞台をつくるための祈りを持って生きる。でないと結局育たないのです。大部分の人は劇団を離れて以後、俳優としての成長が止まっているように見えます。

――浅利さんの仰ることが、ちょっと傲慢に聞こえますが。
浅利  どうして。

――だって人を育てられるのは、浅利さんしかいないように聞こえますよ。
浅利  僕は学生時代、野球をやっていました。恐らく続けたらその方の指導者にもなれたと思います。俳優を育てることがどれほどの苦労を伴うか。誰にでもできる事ではありません。僕は、日本の演出家で、俳優養成に最も努力しているという自負を持っています。

――話題を変えます。そういえば先日、世界的な作詞家で、『ライオンキング』など数々の大ヒットミュージカルを手掛けているティム・ライスさんとお会いになったそうですね。
浅利  彼は僕の親友です。来日していた彼から、ぜひ会いたいと言われました。お互い忙しかったが、久しぶりに旧交を温めました。

――その『ライオンキング』もご覧になったそうですね。
浅利  彼の代表作の一つです。四季の『ライオンキング』が、世界のトップだと言ってくれたのは嬉しかったですね。

――そういえば、四季は彼の作品を5作も上演していますね。『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『エビータ』、『美女と野獣』、『ライオンキング』、『アイーダ』。
浅利  どれも思い出深い作品ばかりです。劇団四季ミュージカルの歩みは、彼との共同作業の歴史そのものといえるでしょう。

――お話はそれだけですか。
浅利  もちろん、新作や今後のプロジェクトのことなど、いろいろな話題がありました。

――新作? それはティムさんとのコラボレーションですか。
浅利  ここでは未だ言えません。今日はこの辺で終わりにしておきましょう。

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