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四季の話題(3)
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――ここで話題を変えましょう。最近、石丸幹二さんが舞台に出演していません。病気だと伺いましたが、どういう状況なのですか。
浅利  思うように声が出せないと言ってきました。僕も最近まで全く知らなかったが、数年前、彼は名古屋公演に自分の車で向かい、大きな交通事故を起こしていたそうです。その時に痛めた古傷の後遺症が最近ひどくなったと聞いています。

――「むち打ち」ですか。
浅利  恐らく。本人の話によると、そのために高い音域を歌うことが辛くなり、最近また痛みが体中に出てくるようになって、俳優を続けていくのが苦しいとも言っていました。

――その頃石丸さんは何をしていましたか。
浅利  『ウェストサイド物語』のトニー役を稽古中でした。トニーは広い音域が求められる、大変難しい役です。候補に挙がる俳優は数多くいますが、あの音域を完全にクリアできるのは三割でしょう。稽古の最終段階で、石丸君も何とか出演できるレベルに到達しました。僕は彼を先発させようとした。その時、彼が話しに来たのです。阿久津陽一郎君、鈴木涼太君が頑張って出演可能の域まで達していたので、石丸君に無理をさせる必要はありませんでした。ここは彼の体調回復を最優先し、『ウェスト…』から外しました。

――「うつ病」だという噂があるようですが。
浅利  それは無いと思います。彼は、この際劇団を辞めたいとも希望していました。休養中に老人ホームや福祉施設を慰問し、ボランティアで歌いたいと言っていました。「うつ病」患者が、ボランティアに励もうと考えるでしょうか。精神は健全な状態を保っていると思います。だから僕はあくまで体調不良だと理解しています。

――石丸さんのような俳優がいないと困りませんか。
浅利  彼がいれば、劇団の中でひとつの役割を担ってくれるとは思います。しかし若手の台頭も著しい。だから居なくて困るということはありません。今度の『ウェストサイド物語』が典型的な例でしょう。『ハムレット』も、田邊真也君がキャスティングされて頑張っている。また石丸君のように40代半ばに近づくと、出演できる主役はそう多くない。そのことも彼にとっては精神的な負担になっていたのかもしれません。

――ということは、このまま石丸さんが退団すると言うこともありますか。
浅利  彼次第だと思います。退団したいなら、引き止めるつもりはありません。彼は『鹿鳴館』の出演も断ってきました。

――歌が無いのに?
浅利  ええ。

――でも契約中なのではありませんか。それでも断れるのですか。
浅利  難しい問題に発展する可能性はあります。彼はもう燃え尽きてしまったのかも知れませんね。

――そんな我儘が許されるのですか。本当の理由は?
浅利  それはわかりませんし、また知りたくもないと感じています。ただ、今の俳優さんは先ず自分のことを考えます。日下君や僕の世代は、先ず劇団のことを第一に考えて生活してきました。 自分の都合や事情を劇団活動より優先することはなかった。石丸君は僕らより若いが、同じ考えを持った仲間だと信じていました。残念です。

――頑張っている同じ世代の仲間たちを裏切ることにもなりませんか。
浅利  劇団四季の俳優が、自分の都合を優先する人たちだけになったら、僕ら第一世代が退いた後は衰退の道を歩みます。劇団活動に身を捧げる信念を持った俳優たちだけが、四季の未来を支えることが出来るのです。

――そういえば、保坂知寿さんが休団されてから、そろそろ1年ですね。
浅利  劇団四季は毎年10月中に、参加俳優に対して次年度の出演契約の継続意思を確認しています。更新しないという申し入れもこのタイミングです。四季は長期的な養成や若い時からの生活保障を行なっているので、契約解除の申し入れから1年間は、四季が求めた仕事をする契約上の定めがあります。

――では1年経過すれば、外部の仕事も出来るようになりますね。
浅利  保坂君が辞めたいと言ってから、ちょうど1年。彼女の場合は俳優を辞めたいのか、四季を辞めたいのか判りませんでしたから、一応休団という形にして1年過ぎました。ただ彼女が相当、疲労していた事は間違いありません。

――何故ですか。『マンマ・ミーア!』のドナ役が長すぎたのですか。
浅利  そうです。彼女はドナに相応しい女優なので、5年間に亘って演じ続けました。もちろん途中で他の役にも出演しましたが、ドナ中心の生活でした。

――そういうケースは他にもありますか。
浅利  以前、『オペラ座の怪人』でクリスティーヌ役を演じていた、Mさんという女優さんがそうでした。キャリアが浅かったせいか、クリスティーヌを長く演じ続けることで疲労していたのです。彼女は結局俳優も辞めてしまいました。多数のキャストで構成しない場合には、このように一人に負担が掛かるケースが多くなるのです。

――それで、このところ必ずダブル、トリプルキャストを組まれるのですね。
浅利  同じような力を持つ俳優を、数多く育てるという方針に切り替えています。今の四季は日本では初めてのロングラン時代に入っています。四季には「燃え尽き症候群」と言う言葉があります。同じ役に続けて出演して燃え尽きる。個人的な事情もあるようだから何ともいえないが、保坂君の退団はこのケースかも知れません。我々は彼女に充分な休養を取ってもらいたいと考えています。

――保坂さんが、退かれると。
浅利  四季には700名の俳優がいます。その中にはかなりの才能が埋まっています。その人たちが育って来ています。保坂君、石丸君も全く無名の新人から育てて来ました。

――それでは石丸さんの新人の頃のお話をしていただけませんか。
浅利  17年前、オーディションを受けに来た東京芸術大学声楽科の3年生がいました。それが石丸君です。音質もいいし、素質もありそうなので合格させました。

――最初はどんな状態でしたか。
浅利  芸大では「姿勢」を教えていないのでしょう。二枚目なのに、ひどい「猫背」でした。だから背中に長い定規を入れ、真夏なのにタキシードを着せて稽古をした。1ヶ月程こうした特訓を続けたら、背筋も少し伸びてきました。

――いきなり『オペラ座の怪人』のラウル役でデビューをしましたね。随分冒険的なキャスティングでした。
浅利  いい新人が登場したと話題になりました。まだ完全に姿勢の悪さが治っていなかったので、今度は『ドリーミング』の「犬のチロー」役にキャストしました。

――あれはかなり踊る役ですよね。
浅利  ダンスの見せ場のある役です。その頃、彼は熱心にレッスンに取り組んでいました。良い成果だったと思います。やはり踊りの多い『アンデルセン』や『キャッツ』にも出演しました。

――なるほど。
浅利  これが入団4、5年目の頃の石丸君の姿です。入団した時は24歳でした。

――保坂さんの場合は。
浅利  高校の発表会に出演していた彼女を四季のスタッフが見て、薦めて受験させたのです。バレエも踊れて声も持っている。そしてスタイルは抜群でした。保坂君は、若い時から非常に良い素質を持っていました。

――保坂さんの入団は、確か『キャッツ』の上演直前ですね。
浅利  そうです。24年前に初演された『キャッツ』の、最初のグリドルボーンが彼女でした。かなりのステージ数になったと思います。この時、20歳でした。

――保坂さんには、出演料に関する「伝説」があるそうですね。
浅利  どこから聞いたんですか。

――彼女は21歳で年収1千万円以上の所得を手にした、劇団四季で初めての女優だと聞きました。
浅利  その通りです。

――後に続く人は出たのですか。
浅利  20代前半でこの額に到達した人はその後出てきました。しかし彼女の記録は、まだ破られていません。
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