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公立病院改革:経営悪化の歯止め狙うが…厳しい医療の現状

 総務省の公立病院改革懇談会が12日まとめた「公立病院改革ガイドライン」は、公立病院を経営する地方自治体に、経営効率化に向けた改革プラン策定と具体的な数値目標の設定を求めた。深刻化する経営の悪化に歯止めをかけるのが狙いだが、自治体の財政悪化や医療費の抑制、医師不足など医療を取り巻く現状は厳しく、改革の道のりは険しい。

 県や市町村の地方公営企業が経営する全国の自治体病院は669事業973病院。そのうち赤字を計上している事業数(公営企業数)の割合は04年66.2%、05年68.7%、06年78.9%と悪化の一途をたどり、病床数を減らしたり、廃院に追い込まれる病院が相次いでいる。

 経営が悪化した理由について樋口紘・岩手県立中央病院名誉院長は「責任感の薄い経営責任者が赤字を先送りするうえに職員にも経営感覚が欠如している。病院の統廃合に地域住民や議員が強く反対する」と分析する。その一方で今回のガイドラインについては「ほとんどが財政収支面からのアプローチで、医師の地域偏在や地域医療確保の解決策が見えてこない」と批判した。

 自治体からの一般会計繰入金や医療費が抑制されるなか、高齢化で患者数は増加する一方だ。加えて医師や職員も高齢化しており、給与費が経営を圧迫している。病院経営者の間では、本当に必要な若手医師が、給与の割に激務である公立病院の現状を敬遠し、医師不足と仕事量の増加に拍車がかかっていると不満が募っている。

 過疎地での医療提供や救急・産婦人科など、公立病院が担うべき役割は依然大きい。ガイドラインは、その役割を明確にした上で経営の効率化基準を設けたが、経営の安定に向けた具体的な提言には至っていない。

 隠岐広域連合立隠岐病院の武田博士院長は「隠岐病院はまだ年1億円ほどの赤字があるが、医師の専門領域を取り払うなど多種多様な医療が提供できるよう一丸となって改革を進めている。病院も自助努力が必要だ」と語る。しかしガイドラインが打ち出した外部からの人材登用などは「現実に確保は困難。絵に描いた餅になりかねない」との指摘もあり、実効性があるプランを地域ぐるみでどう策定していくかが問われている。【七井辰男】

毎日新聞 2007年11月12日 20時27分

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