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【東京】

漱石の『猫塚』 映像見つけた 小説のモデルの猫、小鳥を供養 

2007年11月11日

見つかったフィルムを手にする庭山さん=新宿歴史博物館で

写真

 文豪・夏目漱石(一八六七−一九一六年)の飼い猫や小鳥を供養した「猫塚」を、一九五三年に復元した当時の16ミリフィルムが見つかった。新宿歴史博物館(新宿区三栄町)で開催中の特別展「夏目漱石と新宿の文学者たち」に併せて公開されている。漱石の妻・鏡子さんや長男純一さんらの姿が収められ、同館は「当時の様子を知る上で貴重な資料」としている。

 猫塚は、漱石が晩年を過ごした新宿区早稲田南町の邸宅「漱石山房」跡にある。「吾輩(わがはい)は猫である」のモデルとされる猫や、「文鳥」で描かれた文鳥などを供養するため、漱石没後の一九一九年に建てられた。戦中に空襲で破損し、五三年に区と区教育委員会が復元。漱石の命日の同年十二月九日に披露式典が行われ、フィルムにはその様子が撮影されていた。

 フィルムが見つかったのは今年八月末。同館学芸課の庭山貴裕さんが、来年度に開く別の特別展のため、館内の関連フィルムを調べていたところ、巻頭約六分間に「漱石山房跡 猫塚 復元記念」と題した映像が含まれていた。

 鏡子さんらをはじめ、漱石の一番弟子といわれた文学者の小宮豊隆氏、哲学者で文相などを務めた安倍能成氏らのスピーチの様子などが写っていた。当時の区の担当者が撮影したとみられるが、記録が残っておらずはっきりしないという。

 発見したのは、ちょうど今回の漱石生誕百四十年を記念した特別展の準備をしていた時期。庭山さんは「偶然とは思えない」と、不思議な巡り合わせを喜んでいる。特別展は漱石の遺品の文具や手紙など約百八十点を展示した。フィルムの映像はテレビモニターで流している。十二月十六日まで。 (原昌志)

 

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