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企業告発サイト、恐るべし

サハリン2騒動は“シェル叩き”のとばっちりだった!

 しかし、これらのサイトは、まだ広く世間に認知されるまでには至っていない。これに対し、マーティン・ルイス氏の「MoneySavingExpert.com」は月間約300万アクセス、ドノバン氏の「www.royaldutchshellplc.com」は月間約460万アクセスに達している。

 日本の銀行被害者の会のサイトがもっぱら自分たちの被害を訴えるのに対し、「MoneySavingsExpert.com」は、銀行手数料だけでなく、電気、ガス、水道料金、電話料金、住宅ローン、地方税など様々な支出項目の削減方法を提案し、それぞれに関して、読者が無料でダウンロードできる書式を提供している。

 アルフレッド・ドノバン氏の息子のジョン・ドノバン氏は、「自分たちはこのサイトを単なる告発サイトではなく、シェルに関する世界最高の情報サイトにしたい。そうでなければ、読者はサイトを何度も訪れてくれないから」と言い、パソコンのスクリーンを3つ並べた机に向かって一日中、新聞、雑誌、ウェッブサイトなどからシェルに関する情報を隈なくチェックしている(2人とも定年を過ぎており、働く必要はない)。

 ドノバン父子のサイトは、シェルによるナイジェリアの環境汚染に反対するオゴニ族による反対運動や、サハリン2に反対するWWF(世界自然保護基金)など、反シェルの活動家たちが、行動を呼びかけたり、互いに連絡を取ったりすることなどにも広く使われている。

告発サイトへの対処をアドバイスする危機管理会社も登場

 欧米では、こうした告発サイトに対処する方法をアドバイスする危機管理会社も現れている。インターネット専門のPR会社immediate future Ltd.(本社ロンドン)は、ソニー・ヨーロッパや韓国のサムスンなどを顧客にしている。

 私は時々インタビューで、昔の経済小説と今の経済小説の違いは何かと訊かれることがある。それに対して、こう答えている。

 「昔は少数の有力者が物事を決めていたので、小説も彼らの密室での話し合いを描けばよかった。しかし、ここ20〜30年の経済のグローバル化で、市場、投機資金、国際間の取り決め、WTO(世界貿易機関)、法律、SEC(米証券取引委員会)などの規制当局といった様々な“システム”の影響力が大きくなった。したがって今は、“システム”を描くことにより多くの紙数を割かなくてはならない」

 インターネットサイトもこうした「システム」の1つであり、日本においても告発サイトは、今後ますます企業に対抗する力をつけてくるだろう。消費者にとっては朗報だが、企業にとっては、対処を誤ると予想外のダメージを受けることになる。

<参考文献>

“Top Corporate Hate Web Sites”, Charles Wolrich, 3 August 2005, Forbes.com

“Online revolutionaries - Today’s activists are giving business a bloody nose from behind their keyboards - not the barricades. But savvy companies are joining in” Juliette Garside, The Sunday Telegraph, 9 September 2007

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このコラムについて

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

筆者プロフィール

黒木 亮 (くろき・りょう)

黒木 亮

1957年生まれ。作家に転向する前は、金融マン。大手都市銀行を皮切りに総合商社の英国現地法人のプロジェクト金融部長などを歴任した国際金融のプロ。長い時間をかけた綿密な取材を基に、事実に沿ったストーリー展開は迫力がある。代表作に『巨大投資銀行(上)(下)』『青い蜃気楼―小説エンロン』『トップ・レフト―ウォール街の鷲を撃て』『アジアの隼』『シルクロードの滑走路』などがある。最新作は『カラ売り屋』。大学時代には箱根駅伝の走者としても活躍した。
(写真:住友 一俊)

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