若い女性のスリム志向・ダイエット志向で、やせている女性が増えています。20代の女性の4人に1人は「やせ」の状態と言われています。このことは、次世代にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
2500グラム未満で生まれる小さな赤ちゃんを「低出生体重児」といいますが、この割合は20年前に比べて約2倍に増え、10%に近くなっています。つまり生まれてくる赤ちゃんの10人に1人が未熟児という状況が起こっているのです。生まれてくる赤ちゃんの平均体重は低下していて、20年前より200グラム少なくなっています。前回は受動喫煙の子どもへの影響についてお話ししましたが、妊娠中の母親の喫煙も「低出生体重児」の原因因子の一つです。
「小さく産んで大きく育てる」といいますが、これはさまざまな問題をかかえてます。妊娠中の栄養分が不足すると、胎児はそのような環境に適応して循環やエネルギー代謝を節約し、倹約型となります。そして、発育している胎児のさまざまな臓器にその情報が組み込まれます。小さく生まれた赤ちゃんの持つ倹約型の体質は、生まれてから栄養条件が改善するとむしろ過剰適応となって、肥満や生活習慣病のリスクを背負うことになります。
今よく言われるメタボリック症候群は、遺伝因子と生活習慣から説明されてきましたが、実は胎児期からの栄養も大きく関係しているのです。胎児期の低栄養が成人後の肥満や糖尿病、動脈硬化、高血圧などを高率に発症させ、心筋梗塞(こうそく)などによる死亡率を上昇させるという考え方です。「メタボ」の予防は胎児期から必要になるのです。(大阪樟蔭女子大教授・三宅婦人科内科医院医師、甲村弘子)
毎日新聞 2007年11月11日 大阪朝刊
11月11日 | 第33話 メタボは胎児期から |
11月4日 | 第32話 喫煙は子供への虐待 |
10月28日 | 第31話 たばこは美肌の大敵 |
10月21日 | 第30話 進歩する周産期医療 |
10月14日 | 第29話 妊婦健診の必要性 |