高濃度の鉛が検出されたとして自主回収が相次いだ中国製玩具への不安が広がっている。回収対象となったのは米国メーカーの製品ばかりだが、国内メーカーの玩具の安全基準はどうなっているのか。日本玩具協会の津田博専務理事に現状と対策を聞いた。【反橋希美】
◇鉛、形状、強度…第三者機関が検査
Q 米国や欧州連合(EU)諸国で中国製玩具の自主回収が相次いでいるが、何が問題だったのか。
A 玩具に使われている塗料などには、顔料として鉛の化合物が含まれているものがある。鉛はのみ込むなどして一定量以上吸収されると脳や神経を侵す毒性がある。米国では昨年、4歳児が高濃度の鉛が含まれた金属製のブレスレットをのみ込み、長時間胃の中で滞留したために中毒死する事故が起きた。
通常、玩具の塗装には無鉛か、健康に影響しない少量の鉛しか含まれていないが、今回の回収は、塗装から基準値を上回る鉛が検出されたのが原因だ。
各国とも玩具の安全基準を作って塗装の鉛などに基準値を設けており、米国は任意規格のASTMが、EUでは法規制と連動した欧州規格のENがある。
Q 日本国内の基準は。
A 法的な規制としては、食品衛生法の玩具規格基準がある。塗料に関しては、新製品の初回輸入時に、塩化ビニール樹脂塗料にどの程度鉛などの重金属が含まれているか、乳幼児がなめた場合を想定して40度の水への溶出量を調べている。
また、日本玩具協会では業界の自主規格としてST(玩具安全)基準を定め、合格した製品はSTマークを付けることができる。塗装については、玩具を誤ってのみ込んで胃の中に入った場合、どれくらいの量の鉛が溶出するか希塩酸を使い検査している。試験方法や基準数値(1キロあたり90ミリグラム)は、ISO(国際標準化機構)規格やASTM、ENと同じだ。
鉛は化学物質の安全性検査の一部だが、他にも「先端が鋭くないか」など形状や材料、強度等に関する検査や可燃性なども調査している。製品の欠陥が原因で事故が起きた場合、最大1億円まで賠償を保証している。
また、米国やEUでは、自社で検査するか検査機関に検査を依頼するかは各メーカーの判断に委ねられている。だがSTマークは、指定機関の検査に合格しない限り、付けられない。他国と比べ、第三者機関の検査義務が特徴だ。
Q 相次ぐ自主回収に対し、安全対策は。
A 現在、国内市場に出回っている玩具の約9割が外国製で、うち86%が中国製だ。クリスマスや年末商戦を控え、協会は11月を「玩具安全推進月間」と決めた。STマークは、対象玩具(対象年齢14歳以下)の7~8割に付いているが、メーカーや輸入業者などにその重要性を説明し、さらに普及を図りたい。また、来年から検査の有効期間を4年から2年に短縮するほか、マーク付き製品が鉛の再検査を簡単に受けられるようにした。
◇規制、さらに強化へ
相次ぐ自主回収を受けて、厚生労働省は、食品衛生法の玩具規格基準の塗装に関する規制対象を広げ、鉛に関する検査方法もより厳しいST基準方式に改正する方向で検討している。また、乳幼児を対象にした金属製の玩具アクセサリーも、新たに規制対象に加える方針だ。
メーカー側も安全対策に力を入れ始めた。タカラトミーは今秋、重金属を検知できるX線検査装置を中国国内に導入。また生産工場に対し、新製品のみに義務付けていた塗料に関する証明書提出を追加生産時にも求めるようにした。バンダイも10月から、材料証明書の提出頻度を増やしたほか、抜き取り検査も始めた。
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■最近、日本国内で回収された中国製玩具
発表日 メーカー/対象商品/回収個数/問い合わせ先
6月15日 米・RC2コーポレーション/「トーマス木製レールシリーズ」の11品目/約4万3000個/ソニー・クリエイティブプロダクツ(電話0120・004・867)
8月 2日 米・マテル/「ドーラといっしょに大冒険」シリーズの2商品/40個/プログレスインタラクティブ(電話03・5807・2040)
8月16日 米・マテル/「カーズ」シリーズの「ムービーモーメント『フィルモア&サージ』」/2730個/トミーダイレクト(電話0120・755・031)
9月 5日 米・マテル/「バービーのお部屋セット」シリーズのうち5商品/3655個/マテルお客様相談センター(電話0120・300・507)
9月27日 米・RC2コーポレーション/「トーマス木製レールシリーズ」の4品目/1万5311個/ソニー・クリエイティブプロダクツ(電話0120・004・867)
毎日新聞 2007年11月11日 東京朝刊