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移民への扉、せめぎ合い デンマーク総選挙、13日投票

2007年11月12日03時00分

 デンマークで13日、総選挙(一院制、定数179)の投票がある。自由党中心の中道右派・与党連合と、社会民主党を核とする左派連合が競り合う展開になっている。移民受け入れをめぐり政策や世論がせめぎあう欧州連合(EU)加盟国で、デンマークは最も厳しい移民規制策をとる。だが労働力不足が経済の足を引っ張る懸念も広がり、移民問題が主要争点に浮上している。

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討論会で、与党の移民政策を批判するアスマ・アブドゥルハミドさん(中央)=コペンハーゲン市内で

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デンマーク

 「移民への与党のやり方は不公平だ。なぜ裕福な国が、新たな下層階級を作るのか」

 8日夜、首都コペンハーゲンであった7政党による討論会。左派連合側の候補者で、女性イスラム教徒のアスマ・アブドゥルハミドさん(25)の与党批判に、会場のイスラム教徒たちから大きな拍手が起こった。

 デンマークには、EU外からの移民は、たとえ同国の国籍を取得しても母国から配偶者や両親を自由に呼び寄せられない厳しい規制がある。01年に政権に就いて以来、移民規制強化を推し進めたラスムセン首相は「以前の社民党政権は移民を入れすぎた。デンマークが移民の磁石だった時代に戻すのか」と訴える。

 現与党が左派連合から政権奪取した01年、トルコ系移民がデンマーク語を話さず、デンマーク社会に溶け込まないことが問題視されていた。低所得者層には、移民に仕事を奪われるという危機感もあった。

 しかし、閉鎖的な移民政策が、好調な経済に水を差す可能性が指摘されている。最新調査で失業率は3・1%で03年の半分。政治経済評論家ヨン・トルストップ氏は「労働力が不足し、いかに人材を集めるかという問題に新政権は直面する」と予測する。

 フランスでは02年の大統領選で移民排斥を唱える右翼政党の候補が健闘するなど、欧州各国で反移民感情が広がった。一方、スペインなどは少子高齢化による労働力不足を補うため移民を積極的に受け入れた。移民問題にどう向き合うべきか占う選挙として、欧州ではデンマークの選択に関心が高まっている。

 そんな中、特に注目を集めているのが、5月にできた中道の新党「新同盟」だ。シリア系移民のナサ・カダー党首は「世界から質の高い労働力を集めるにはオープンな政策が必要だ」と話し、移民への規制緩和を主張。約10議席を獲得しそうな勢いで、伯仲する与野党間でキャスチングボートを握る可能性が高い。

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