【新潟】中越地震で被災した住民の「帰村」が遅れている旧山古志村(長岡市)で、テレビ電波を受信できない状態が続いていることが10日、分かった。NHKが「共同受信用アンテナを10月末までに建設する」と約束したにもかかわらず、設置が遅れているためだ。独居老人にとってテレビは「生活必需品」。テレビ問題が帰村の行方を左右する一因となっている。
テレビが受信不能なのは、避難指示が4月に解除されたばかりの梶金、木篭(こごも)集落の41世帯96人。10月初めに自宅を再建した関まゆみさん(53)は「1カ月間も情報過疎状態」とため息をつく。
地元が4月に結成した「梶木テレビ共同受信施設組合」(藤井元一組合長)によると、NHKが今夏前、「共同アンテナを10月末までに設置する」と約束したという。だが、いまだに建設は始まっていない。
組合員の33世帯は今も長岡市街の仮設住宅で暮らすが、梶金集落に家を建て始めた男性(73)は「村に戻って、テレビがなくてどうする。『水戸黄門』が見たいがて」と帰村後の楽しみのなさに不満を隠さない。
放送法は、テレビ受信が難しい地域では、地元で作る組合とNHKが協定を結び、民放も見られる設備を造るよう定めている。毎日新聞の取材に、NHKは「アンテナから各戸に送る光ケーブルのルートの選定に時間がかかった」と釈明。「12月末までには受信可能になるよう工事する。山古志の視聴者の方には、近く説明会を開きたい」と話す。【根本太一】
2007年11月11日