造船のまち、玉野らしい土産物がお目見えしました。建造した船が最初に海に浮かぶ進水式で使われた支綱(しこう)(ロープ)から作った安産や開運などのお守りがそれです。
三井造船玉野事業所(同市玉)の進水式では、船主や荷主が船をつないでいる支綱を切断すると、巨大な船体がゆっくりと海へと滑り降りていきます。支綱はいわば赤ちゃんの“へその緒”。船が無事に進水したことを赤ちゃんの誕生になぞらえ、進水式で使った支綱の一部は船主らに贈られ、腹帯にするなど安産のお守りとして珍重されています。
新顔の土産物は、ユニークなこの習わしに着目した玉野市観光協会が考案。同事業所から譲り受けた支綱を短く切り、縁起物のカメをかたどったガラス玉を付けたもの(千四百五十五円)と、単にクロスさせたもの(二百九十五円)の二種類。地元の神社で祈とうもしています。例えばガラス玉付きを千五百円出して買えば「始終ご縁」がありますようにと四十五円のお釣りがつく、しゃれっ気も。発売を始めた十月三十一日も大安にこだわったからだそう。
造船のまちに息づく地域ならではの慣習を生かし、支綱という希少価値の高いロープから作られた土産物。そこに着目したのは、なかなかの目利きだと思います。値段の高低はともあれ、玉野を語るにはもってこいの特産品では。
かくいうわたしも早速、ガラス玉付きを購入したところ偶然にも、お釣りの中に、生まれ年に製造された十円玉が…。もうこれは、ご縁を信じずにはいられません。
(玉野支社・小松原竜司)