会期末を目前に、今国会の会期が十二月十五日まで三十五日間延長されることが決まった。海上自衛隊によるインド洋での給油活動を再開する新テロ対策特別措置法案の行方が、延長国会に入っても焦点であることに変わりはない。
福田康夫首相は、来日したゲーツ米国防長官との八日の会談で「給油活動の早期再開に向け最大限努力している」と述べ、法案成立に全力を挙げる考えを伝えた。政府、与党は衆院のテロ防止特別委員会、本会議での採決を経て来週前半に衆院を通過させる構えだ。首相は十五日、米国などへの外遊に出発する。
しかし、その後も問題だ。参院で主導権を握る民主党は小沢一郎代表の続投決定を受け再び対決色を強めている。民主党の鳩山由紀夫幹事長は九日、社民、国民新両党の幹事長と会談し、対テロ新法案反対で一致した。野党側は優位に立つ参院で徹底審議を求め、また守屋武昌前防衛事務次官と防衛商社の癒着問題などで追及を強める姿勢だ。
参院で法案が否決され、与党が衆院で再議決に踏み切れば首相の問責決議案提出の可能性もあろう。波乱含みの展開が予想され法案の行方は不透明といわざるを得ない。
とはいえ、日本がアフガニスタンのテロ対策にどうかかわっていくかは国の針路を左右しかねない重大事であり、与野党の議論が必要だ。
海自の給油活動延長問題は夏の参院選前から今国会の焦点といわれていたが、参院選で与野党勢力が逆転する「ねじれ」が発生し、行き詰まった安倍晋三前首相の退陣と首相交代劇で時間を費やした。その後も守屋前次官や給油量の訂正をめぐる防衛省の隠ぺい問題、さらに小沢代表の辞任問題もあって審議は入り口の部分で停滞したままだ。
既に海自の給油活動は停止している。国会の会期が一カ月以上延びたのを機に与野党は仕切り直しをし、議論を進めるべきではないか。
民主党も対テロ新法案の対案といわれるアフガン支援策をまとめつつある。骨子によれば民生支援が中心だが、給油を含むインド洋での海上阻止活動に関し国連決議に基づく国連の活動であれば参加を検討するとし、給油再開に含みを持たせた。
民主党がこの対案を法案の形で出すかどうか不透明で、法案の競い合いか対テロ新法案の修正協議か、今後の与野党の審議の形態は現段階では見極めがつかない。しかし、アフガン国民のためを第一義に、日米関係の将来像や国連中心主義の在り方まで視野に入れ、本格的に議論すべきであることは確かだ。
東京地検特捜部は防衛商社「山田洋行」の元専務宮崎元伸容疑者ら二人を業務上横領などの疑いで逮捕した。
直接の容疑は山田洋行の米国子会社から一億円余を着服したことにあるが、この不正経理の解明を突破口に、既に明らかになっている守屋武昌前防衛事務次官への過剰接待ゴルフの裏に何があったか、また防衛装備品調達をめぐる疑惑も視野に官業癒着構造にメスを入れてもらいたい。
宮崎容疑者は一九六九年に山田洋行に入社、政官界の広い人脈を駆使して経営全般を取り仕切ってきた。だが、先月末、衆院で行われた守屋前次官への証人喚問で接待攻勢の一端が分かった。前次官には通算二百回を超えるゴルフのほか旅行、マージャン、飲食など常識外れの接待が行われていたのだ。
資金をどう工面したのか。過剰接待の狙いは何か。守屋前次官は見返りに便宜を図ったことは「一切ない」と否定するが、本当か。先の証人喚問で具体名は明かさなかったが、宴席に同席した防衛庁長官経験の政治家とはだれか。疑惑はくすぶったままだ。
ほかにも六年前、レーダーをかく乱するための装備品納入で山田洋行は約一億八千万円を水増し請求したが、旧防衛庁から何ら処分を受けなかった。そこに守屋前次官はかかわっていなかったのか。
航空自衛隊の次期輸送機のエンジン販売でも、宮崎容疑者が昨年九月に設立した「日本ミライズ」と随意契約するよう守屋前次官は口出ししなかったか。特捜部は疑惑の全容を明らかにしてほしい。
国会も来週予定される守屋前次官の参院での証人喚問などを通じ、巨額の利権が絡む防衛省の闇の部分の糾明を急がなければならない。
(2007年11月10日掲載)