▽住民、一応の存続にひと安心
存廃が揺れていた尾道市瀬戸田町の広島県立瀬戸田病院は、有床診療所に縮小し存続するとの方向性が八日、固まった。同病院移管検討委員会(寺岡暉委員長)の報告書を受けた判断に、地元住民は一応の存続にホッとする一方、サービス低下を懸念する声も出た。
町内で民宿を経営する倉本加津子さん(76)は大腸のポリープや胆石の切除で入院したことがある。「命を助けてもらった。今は時間がないので町内の開業医にかかっているが、いざというときは安心できる」と存続の方向を喜ぶ。
八月に総合病院機能の存続を求める住民八千余人の署名を県に提出したハートイン瀬戸田政策研究会の山下哲也副会長は「運営主体が代わっても、県の責任で地域医療サービスの質を維持してほしい」と注文する。
瀬戸田町商工会の田中民男会長は「地域の発展には住民生活の安心が不可欠。高齢化が進む中で弱者にも目配りした方向性が打ち出されていると思うので、縮小も致し方がない」と話した。
こうした中、尾道市は診療所としての存続方針を評価するものの、今後の対応については慎重な姿勢を見せる。東京出張中の平谷祐宏市長は「地域住民の要望を踏まえた、地域医療を守る内容の報告書と考える。県から(移管の)話があれば、その内容を検討していく」とコメントした。
市によると、市内には十二の病院と百四十七の診療所があり、瀬戸田町内は瀬戸田病院と民間の四診療所がある。移管受け入れについて、検討委メンバーでもある市福祉保健部の花谷慶孝部長は「医師態勢や収支計画など、県が縮小後のビジョンを具体的に示さない現時点では白紙」としている。(石田憲二、田儀慶樹)
【写真説明】県立瀬戸田病院の待合室。8日も町民がインフルエンザの予防注射などで訪れていた
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