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社説

混合診療/判決を論議深める機会に

 健康保険による診療と、保険の利かない自由診療を併用することを「混合診療」と呼ぶ。だが、現在の医療制度では原則として認められない。併用すれば、本来は保険が適用される診療も含め、医療費全額が自己負担の自由診療扱いとなってしまう。

 神奈川県のがん患者が、混合診療で保険診療部分までが全額負担になるのは違法だと訴えた訴訟で、東京地裁は、混合診療の保険適用を原則禁止してきた国の法解釈は誤りとする原告勝訴の判断を示した。

 腎臓がんの治療中だった原告は、保険によるインターフェロン治療に加え、適用外の治療も受けていた。その際、三割負担でいいはずの保険適用治療までもが全額負担とされた。これでは、患者にとっては理不尽な制度に映るのも致し方ない。

 混合診療をめぐっては、政府の経済財政諮問会議などがかねて全面解禁を求めてきたのに対し、厚生労働省や日本医師会は禁止の堅持を主張し、対立してきた。

 今回の地裁判決は、その混合診療に対する初めての司法判断である。賛否が依然分かれる中で、法解釈に力点を置き、患者の負担軽減へ後押しした判決ともいえる。ただ、医療制度のあり方にもかかわる判断だけに、及ぼす影響も大きい。

 今回の判決をきっかけとして、混合診療をどう扱うべきか、あらためて論議を深めていくことが必要である。

 経財諮問会議などの解禁論は、治療の選択肢が広がり、なにより患者の費用負担が軽減されると説明している。

 一方、厚労省や医師会は、解禁すれば診療側が収益の多い自由診療へ誘導しがちとなり、結果的に経済力の差が治療格差を生み、医療の平等性が保てなくなると主張している。さらに、保険証一枚で等しく受診できる「国民皆保険」を崩す呼び水になりかねないと解禁に強く反対している。

 現行制度は国が承認した保険治療を最優先させる仕組みである。混合診療の禁止も承認外の治療に障壁を設けるためだ。だが、あおりはがん患者らに厳しい。自由診療を受けるのも、新しい治療法や薬に賭ける切羽詰まった状況からきている。

 このため二年前に、混合診療が一部解禁された。専門家会議の審査で新しい治療法などを解禁対象として認定する体制となったが、臨床試験などの遅れもあり、なかなか進んでいないのが実情だ。

 そうした矛盾をどう解消していくか。国は、患者負担を軽減しつつ、皆保険制度維持の道を探る必要がある。そのためには、徹底した国民的論議が欠かせない。

(11/9 10:17)

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