橿原市の妊婦死産問題を受け、県の調査委員会(委員長、荒井正吾知事)が9日まとめた最終報告。1次救急輪番の整備など以外にも、コンピューター画面上で診療可否を確認できる「救急医療情報システム」の情報更新頻度の増加や、市町村消防の広域化による消防力の充実・強化など多岐にわたる対策が示された。しかし根本的な医師不足対策では限界も垣間見えた。【中村敦茂】
他に盛り込まれた対策は、▽救急救命士の養成や訓練▽近隣府県のドクターヘリの広域活用と県独自の導入の検討▽市町村に妊婦健診の公費負担回数増の働きかけ▽妊婦に対する受診指導の強化や啓発の充実--など。
医師不足対策でも、県立病院医師の処遇改善や県立医大を卒業後一定期間、県が指定する医療機関で従事することを条件とした奨学金の創設などを打ち出した。しかし、荒井知事は「地域ではなかなか手の届きにくい事項だと感じた」と医師不足対策に最も地方の限界を感じたと打ち明けた。報告書には、医学部の定員増や無過失補償制度、第三者による死因究明制度の創設など国への要望が並んだ。
一方、昨年8月に大淀町立大淀病院で、分娩(ぶんべん)中に意識不明になり、19病院で転送を断られた末、死亡した五條市の高崎実香さん(当時32歳)の義父憲治さん(53)は「声が届かなかった。残念で仕方ない。今回の問題の原因は、県立医大で収容できなかったことにある。何が何でも県内で収容を目指すという方向で議論がなされなかった」と報告の内容を批判した。
毎日新聞 2007年11月10日