「在宅支援病院」の評価を提案/厚労省

 在宅で療養する患者の往診や訪問看護を24時間体制で実施する「在宅支援診療所」が地域ごとに偏在し、在宅医療を提供する環境の整備が不十分であることから、厚生労働省は2008年度の診療報酬改定で在宅医療を支援する病院を診療報酬で評価する方針を固め、11月9日の中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に提示した。しかし、委員から異論が出たため、次回以降に継続審議となった。

 厚労省によると、06年度の診療報酬改定で創設した「在宅療養支援診療所」は今年7月現在、全国で約1万施設に拡大しているが、地域ごとの偏在がある。

 在宅療養支援診療所の数を75歳以上の人口1,000人当たりに換算すると、最も多かった大阪府が1.92施設で、最も少なかった富山県の0.22施設と約9倍の開きが見られた。

 このため、在宅医療を行う診療所がない地域では、在宅医療を行う「病院」を在宅療養支援診療所と同様に診療報酬で評価する。

 具体的には、@周囲に在宅医療を提供する医療機関がないこと、A在宅医療の主たる担い手が病院である地域であること、B入院患者に対する医療提供体制を確保すること――などの要件を満たした場合、在宅療養支援診療所と同等の評価をする。

 具体例として、病院の半径5キロメートル以内に在宅医療を行う診療所がなく、往診件数が週20件、在宅患者数55人のA病院(121床、医師11人のうち在宅担当医師3人)などを挙げ、「周囲に診療所がなく、地域における唯一の病院であること」を強調した。



 質疑で、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が「周囲5キロ以内に診療所がないとすると、この要件を満たす病院は全国にいくつあるか」と質問した。
 厚労省保険局の原徳壽医療課長は「分からない。ある団体に尋ねたところ、周囲5キロ以内に医療機関がゼロなのは、その団体の中で4病院だった」と答えた。

 西澤委員は「在宅医療の推進は賛成だが、それでは効果がない。5キロ以内に医療機関がまったくないのは、北海道でも島ぐらいだろう。半径5キロ以内という条件はなくしてほしい」と求めた。
 また、地域に診療所があっても在宅医療が進んでいない地域もあることから、近隣の診療所と連携して在宅医療を推進する中小規模の病院に対する評価も求めた。

 対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)も同様に「距離で考えるのはどうかなと思う」と述べた上で、在宅療養支援診療所が偏在している原因や、在宅療養支援診療所の実態などを調査して慎重に検討することを求めた。

 松浦稔明委員(香川県坂出市長)は「要件を緩和すると病院が在宅患者を抱え込む危険がある。在宅は診療所に任せて、病院は病院としての役割を果たすべきだ。条件は厳しくしてスタートし、様子を見ながら進めていくべき」と述べ、慎重な対応を求めた。

 これらの意見に対して、原課長は次のように説明した。
 「今回は、在宅療養支援診療所を中心として在宅医療を展開していこうという平成18年改定の思想の下、『診療所がない場合にどうするか』という提案をしている。今後、在宅医療を病院も含めて進めていくかどうかは大きな問題なので、厳しい条件を付けるべきか広げるべきか、もう少し議論していただきたい」

 土田会長は「今回の提案では良いとも悪いとも判断できない。もう一度整理して提案していただき、次回以降に議論したい」と述べた。


更新:2007/11/10   キャリアブレイン

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