◎「いしかわ未来博」 ITを身近に引き寄せたい
金沢市の県産業展示館で九日、最新の情報機器やロボットなどを紹介する「いしかわ“
夢”未来博2007」が三日間の日程で開幕した。情報通信などの先端技術はいまや、住空間や健康、介護、教育など、あらゆる分野に進出し、生活の質を高める手段として欠かせないものになっている。敷居が高いと最初から遠ざけず、ITを身近に引き寄せ、生活の中に上手に取り入れていきたい。
科学技術は情報通信の進歩に支えられ、産業界の効率化や新たなビジネスを生み出すば
かりでなく、高齢化の進展に対応し、生活支援や生きがいづくりという点からも期待が高まっている。これからは技術を駆使した商品やサービスが日常生活の隅々まで浸透していくだろう。
すでに子どもや若者の間では、学校現場や趣味の世界などで情報技術に触れる機会が増
えているが、半面、親や祖父母世代との情報格差も指摘されている。そうした世代間ギャップは決して好ましいことではなく、社会全体で技術を活用していくことが今後の課題となろう。サービスや商品も生活者の視点に立って使い勝手を追求しており、まず触れて体験してみることが大事である。
たとえば、未来博で展示されている「リハビリ支援スーツ」は、脳卒中の後遺症で半身
マヒになった人でも、人工筋の働きによってリハビリがしやすくなる。こうした介護機器が在宅で普及すれば家族の負担軽減にもつながるはずである。
生活を便利にする技術として、とりわけ関心が高まっているのがICタグだ。「食育S
ATシステム」はICタグで食事のカロリーや栄養価が分かり、健康的な食事管理が可能となる。また、スーパーではレジの手打ちからPOSシステムに変わり、買い物が便利になったが、現在は商品にICタグを付けた「セルフレジ」の開発が進み、これが普及すれば、それこそ瞬時に精算ができるという。
会場では二足歩行ロボットの対戦コーナーや、ロボットを使ったサッカー競技など多彩
なロボットを展示したコーナーもある。人間に限りなく近づくロボット技術は、分かりやすい形で科学の進歩を教えてくれる。それらに触れる子どもたちが未来に夢を膨らませ、科学技術の担い手が増えることを期待したい。
◎政府税調答申 納得いかぬ消費税ありき
政府税制調査会が〇八年度税制改正答申の柱に消費税率の引き上げを据える方針である
のは、国民感情として納得がいかない。少子高齢化に伴って膨らむ社会保障費の安定財源を確保するためには、国民が広く負担を分かち合う消費税増税が避けられないともっともらしい説明がなされているが、国民に負担増を強いる前に、歳出の徹底的な見直しが必要である。その努力がまだまだ足りない。
インド洋での給油活動など、与野党間のミゾの深い問題が多い中で、双方が一致して取
り組めるのは、税の無駄遣いに切り込むことである。ちまちまとしたアリバイづくりのような削減ではなく、大胆な歳出カットに与野党が協力して取り組む姿を見せてもらいたい。
税の無駄遣いの一端は、会計検査院の〇六年度決算検査報告に示されている。報告によ
ると、官庁や政府出資法人などによる不適切な経理処理は約三百十億円に上る。検査が行われたのは約三万二千六百カ所の対象のうち約二千七百カ所に過ぎず、不適切な経理処理額は実際には、その十倍以上の計算になる。
検査院報告でより重要なのは、一般に割高で不正の温床になるとの批判が強い随意契約
の見直しを迫ったことである。国の契約は競争入札が原則で、随意契約は発注先が限定されるなど特別な場合だけである。しかし、省庁などの〇六年度の契約十四万件余のうち、随意契約は半数以上の約八万件に上るという。政府は今年度、省庁などの随意契約の六割を競争入札に切り替える目標だが、表向き競争入札でも、厳しい条件を付けて事実上、随意契約になっている例が少なくないという。
随意契約に関してさらにいえば、政府が統廃合をめざす独立行政法人(独法)が関連法
人と結んだ契約の大部分は随意契約で、その独法の整理は所管省庁の強い抵抗で進まないという状況が続いている。
民主党は「税金無駄遣い一掃本部」を設置し、補助金・天下り・特別会計・官製談合・
随意契約の五テーマで検証を進めているが、これは的を射た取り組みである。政府、与党も大胆な歳出削減を目に見える形で示さないと、消費税増税を簡単に納得する国民はいないであろう。