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南沙、滑走路完成まで秒読み
【台北=長谷川周人】台湾が実効支配する南シナ海のスプラトリー(中国語名・南沙)諸島最大の島、「太平島」(約48万平方メートル)で建設中の軍用空港の完成まで秒読み段階に入った。空軍部隊の常駐も視野に入れた空港建設は、領有権を主張する中国などへの軍事プレゼンスとなり、今後、南沙をめぐる中台の緊張が高まる可能性がでてきた。年内にも陳水扁総統が現地を視察する、との情報もある。
台湾の国防当局は2005年秋、島を管理する海岸巡防署(海保)の常駐職員への物資補給などを理由に、陸軍兵力を投入して空港建設に非公開で着手。計画では12月中に滑走路が先行完成し、C130輸送機を使った物資の補給拠点となる。さらに航空燃料補給基地など付帯施設を整備すれば、空軍が保有するミラージュ戦闘機や早期警戒機「E−2T」などの配備にも道を開く。
台湾の李天羽国防部長(国防相)は今月4日、国防部長としては陳政権発足後初めて、建設が最終段階に入った軍用空港の滑走路を視察。海軍のフリゲート艦で現地入りした李部長の訪問名目は、陸軍工兵部隊の表彰や慰問などだが、演説を通じて南沙における実効支配力をアピール、急速な軍備増強を図る中国を牽制(けんせい)した。
李部長は、台北帰着後に行った立法院(国会)国防委員会での答弁でも、将来的には空軍部隊の常駐を視野に入れる考えを表明。台湾メディアに「今やらなければ、将来必ず後悔する」と述べ、空港建設の戦略的な位置付けを常駐職員に対する「人道措置」から「主権確立」に格上げする方針を強調した。
大小の環礁から成る南沙は、将来的な海底油田の開発や漁業権問題も絡み、中台のほかベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイも領有権を主張。フィリピンがすでに軍用空港を完成させるなど緊張が続く。
ただ、台湾の最大野党、中国国民党は、中国への刺激を避ける立場から、軍事プレゼンスの強化には反対する。台湾は来年3月に総統選を控えており、陳政権に近い国防関係筋によると「政権は12月にも総統の現地視察を含む南沙をめぐる政治判断を下すだろう」という。