NTTが発表した光回線加入者目標の大幅な下方修正は、政府が唱える政策と現場の状況が一致していないことを露呈する結果となった。政府もNTTも、「目標引き下げの影響はない」と主張するが、老人介護や通信教育などの“世界最高水準”をうたったさまざまな次世代サービスは、各家庭が光ファイバーに加入しなければ実現しない。
総務省は昨年8月、「次世代ブロードバンド戦略2010」の中で、光回線による超高速ブロードバンドFTTH(ファイバートゥーザホーム)の世帯カバー率を平成22年度までに90%とする目標を掲げた。
同省高度通信網振興課などによると、この数字はあくまで、希望すれば光サービスを使うことができる世帯を指す「カバー率」を指したもので「NTTの実契約数とは直接関係ない。直ちに世帯カバー率への影響が起こるとは考えていない」と説明。実際、光回線の世帯カバー率は今年6月末時点ですでに84. 1%に達している。
しかし、いくらカバー率を90%に近づけても、光回線の加入者が増えなければ、全国で便利な暮らしができるという政府の構想は、絵に描いたもちも同然といえる。
光回線に加入しないのは、月額5000円に見合う魅力がないとみられているからだ。NTTの三浦社長は、キラーコンテツの一つとして地デジ再送信をはじめとする映像コンテンツを挙げたが、これは光回線でなくても可能だ。携帯電話万能時代の今、“使わずにはいられない”サービスがなければ爆発的普及は期待薄。政府が描く「IT国家」も夢に終わる。
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