ある美容外科の院長が取材拒否に転じた。豊胸手術中に患者の容体が急変して亡くなったことで遺族から裁判を起こされた稲吉浩司医師を知る一人。「これ以上、話が大きくなると、こちらがとばっちりを受ける。あいつ(稲吉医師)個人の問題にしてほしい」と口をつぐんだ▼院長は説明責任を問われる立場でもなく、取材を受けるも受けないも自由だ。しかし、少し前まで自ら時系列に整理した資料を示し、「美容整形に向けられる不信感をぬぐい去りたい」と語っていただけに残念に思う▼私は「よりよく生きる」ための医療として美容整形を否定するつもりはない。無料情報誌などの広告に「専属院長として責任を持って担当します」と堂々、顔写真付きで登場する院長に、正しい「美の世界」をご教授願いたかった。【立上修】
毎日新聞 2007年11月6日