入院患者の男性が射殺された佐賀県武雄市の篠田整形外科が事件後、待合室で外来の診察開始を待っていた高齢者らに全く状況を説明していなかったことが九日、分かった。早朝から玄関の出入りが自由な医療機関だったが、外部からの襲撃には防御態勢がないという弱点もあらわになった。
事件が発生した八日午前七時四十分ごろ、一階の待合室には十五人ほどがいた。そのうちの一人の女性(63)は「普段から待合室は高齢者の憩いの場所でもある。犯人と擦れ違っていたかと思うと、体の震えが止まらなかった」と話す。病院からは何の説明もないまま、女性は警察官の事情聴取を受けたという。
病院の篠田侃理事長は、外来患者を放置したことについて「捜査への対応に追われていた。不安な思いをさせて申し訳ない」と謝罪。二階の入院患者には、看護師が個別に説明に回ったとしている。
病院は正面の扉を毎日午前六時半にオープン。通勤前に高齢者を病院に送り届ける家族が多く、病院にとっては「患者への配慮」でもあった。
病院には総勢約八十人の医師や看護師、理学療法士らが勤務するが、午前八時半に外来診療が始まるまでは当直の看護師二人がいるだけで、ほとんど無防備状態。今回の犯行は「一番弱い時間帯が狙われた」(篠田理事長)ことになる。
病院は八日夜から、玄関付近に警備員を常駐させ始めた。
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