岡山市表町、天満屋岡山店の葦川会館で開かれている「歳末助け合い美術展」に出かけるのが、毎年の楽しみになっている。
国内外の美術・工芸、文化、宗教界で活躍中の人たちから寄せられた書画や工芸品などを入札し、落札者に買い上げてもらう。収益金は「歳末愛の義援金」として社会福祉施設や社会福祉事業に役立てられている。
今年も約千点が並ぶ。備前焼の大ぶりのぐいのみは、日本酒の味を引き立ててくれそうだ。墨痕鮮やかな書は床の間に飾ってみたい。華麗な色彩の日本画や油絵は壁面を引き立てよう。眺めるだけでも楽しめるが、高過ぎず、さりとて安過ぎず、悩みながら値段を付けるのがまた面白い。
展覧会は、今年で六十回を数える。一九四八年春、主催する山陽新聞社会事業団が誕生し、十二月初旬に第一回展が開かれた。当時の山陽新聞を見ると「歳末厚生義金造成書画工芸展」と称している。約二百五十点の作品が寄せられ、日本画家の池田遙邨、陶芸家の河井寛次郎の名も見える。
同じページには「引揚船」の見出しでソ連から帰国した人たちの名簿、越年資金を要求する県内の労組交渉の経過、闇市の取り締まりなどの記事が載っている。
食べるにも事欠く時代に始まった展覧会が、今も続く。美を愛する人々の温かい善意に支えられているからだろう。会期は十一日まで。