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袴田事件をめぐる最近の動きをご存知だろうか? 裁判官が合議内容を明かすのは違法。ところが、その禁を破ってメディアやブログで証言を繰り返し、袴田死刑囚の無罪を訴え続けている。 40年以上前の死刑判決について語る元裁判官・熊本典道さん=6日午後、東京・有楽町(撮影:軸丸靖子) その熊本さんが袴田事件を「おかしい」と感じた理由は、20日間平均12時間取り調べて、自白しか証拠がなかったことだという。 「他に証拠がないから20日間めいっぱい調べて、最後に自白させている。過去の冤罪事件と非常に似ていた」 ちょうど松川事件(1949年、14年後に全員に無罪判決)、八海事件(1951年、17年後に無罪判決)、菅生事件(1952年、6年後に無罪判決)と、公安が絡んだ典型的なでっち上げ事件が続いていた。加えて、東京地検令状部で勾留請求担当を経験していた熊本さんは、警察や検事がどうやって裁判官をちょろまかして令状を取るかを知っていた。 そういうなかで受け持った袴田事件の審理で、次々に出される証拠は、自白を除けば、被告人の有罪立証には遠い証拠ばかりだった。自白以外に被告人に結びつく証拠はないのではないかと思えたという。 「これは有罪にはできん、と感じたが、3人の判事による合議の最後の最後で2対1で負け、有罪判決が確定した」 心証とは異なる判決に署名せざるを得なかったばかりか、判決文も熊本さんが書かなければならなかったという。 「米国のウォーレン裁判官の生き方から、『職務に忠実であれ』と学んでいた。そう考えて書き上げた。それで、おれは本当はこうだったんだと注意深く読めばわかるような、いわばインチキの判決を書いた。誰か気付いてくれる、何とかなると。だが、それから40数年たってもいまだ袴田君の無実が明らかにならず、残念でならない」 自白が優先され、物証が尊重されない、また再三の再審請求が実現しない日本の刑事裁判制度については、講演の前に司会者から「日本の刑事制度は石器時代じゃないか」と指摘されたエピソードを紹介し、 「サバを読んでも江戸時代レベルだと思っている。日本では、刑事事件になると『あいつは本当に犯人か』黒白はっきりつけようとするが、人間が人間をさばくのに黒白つけようがあるだろうか。裁判官ができるのは、証拠をもって有罪といえるかどうか、合理的な疑いを否定できるかどうかということ。それ以上を裁判官に求めるのは酷だと思う」 と話した。 同日、ともに講演した日弁連袴田事件弁護団の小川秀世弁護士は、 「熊本さんは最初、無罪判決を書いたが、その後有罪判決に書き換えたと聞いている。この事件で45通もあった自白調書のうち44通が証拠として認められなかったのは、このオリジナルの判決文が影響しているのだと思う」 と解説。 「日本の刑事裁判制度は非常に野蛮な制度で、袴田さんはその被害者だ。警察や検察の取り調べにも問題がある。連続して23日間、時間制限なしで取り調べられる。弁護人は取り調べに立ち会うことも、自由に会うこともできない。袴田さんの場合は、22日間の取り調べで3回、合計37分間しか弁護人と面会できていない」 とし、さらに 「驚くべきことは、昭和41年当時から現在まで、こうした野蛮な制度が存続しているということ」 と、問題に対して改善がなされない司法の病根を糾弾した。 事件発生から40年以上、3畳一間に拘禁されている袴田死刑囚は、死刑確定後、精神に異常を来しているという。弁護団は年内に最終意見書を最高裁に提出し、来年中にも結論が出る見込み。
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