民主党の小沢一郎代表は4日夕方、党本部で緊急記者会見を行い、辞意を表明した。会見で小沢氏は、自民党との連立政権に関する報道により「党内を混乱させた責任を取る」ために、鳩山由紀夫幹事長に辞職願を提出したと説明した。
※以下は記者会見での小沢代表の発言全文
民主党本部での会見で辞意を表明する小沢一郎・代表(NHKニュース映像より)
小沢一郎・民主党代表の辞意表明会見(全文)
民主党代表としてけじめをつけるにあたりまして、私の考え方を申し上げます。福田総理の求めによる、2度の党首会談で総理から要請のあった、連立政権の樹立をめぐり、政治的混乱が生じたことを受け、民主党内外に対するけじめとして、民主党代表の職を辞することを決意し、本日、鳩山由紀夫・幹事長に辞職願いを提出し、執行部をはじめとして同僚議員のみなさまに、私の進退を委ねました。
一つ、11月2日の党首会談において、福田総理は衆参ねじれ国会で、自民・民主両党がそれぞれの重要政策を実現するために、民主党と連立政権をつくりたいと要請をするとともに、政策協議の最大の問題である、我が国の安全保障政策について、きわめて重要な政策転換を決断されました。
そのポイントは、
1、国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安保理もしくは国連総会の決議によって設立あるいは認められた、国連の活動に参加することに限る。したがって、特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。
2、新テロ特措法案は、できれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力体制を確立することを最優先と考えているので、連立が成立するならば、あえてこの法案にこだわることはしない。
福田総理はこの2点を確約されました。これまでの我が国の無原則な安保政策を根本から転換し、国際平和協力の原則を確立するものであるだけに、私個人はそれだけでも政策協議を開始するに値すると判断をいたしました。
二つ、民主党は先の参議院選挙で与えていただいた参議院第1党の力を活用して、マニフェストで約束した年金改革、子育て支援、農業再生をはじめ、「国民の生活が第1」の政策を次々に法案化して、参議院に提出していますが、衆議院ではいまだ自民党が圧倒的多数を占めている現状では、これらの法案を今成立させることはできません。逆にここで政策協議を行えば、その中で国民との約束を実行することが可能になると思います。
三つ、もちろん民主党にとって、次の衆議院総選挙に勝利し、政権交代を実現して、「国民の生活が第1」の政治を実行することが、最終目標であります。私もそのために民主党代表として全力を挙げて参りました。
しかしながら、民主党はいまださまざまな面で力量が不足しており、国民の皆さまからも、自民党は駄目だな、民主党も本当に政権担当能力があるのか、という疑問が提起され続け、次期総選挙での勝利は大変きびしい情勢にあると考えております。その国民の皆さまの疑問を払拭するためにも、政策協議を行い、そこで我々の生活第1の政策が取り決められるならば、あえて民主党が政権の一翼を担い、参議院選挙を通じて国民に約束した政策を実行し、同時に政権運営の実績を示すことが、国民の理解を得て民主党政権を実現する近道であると私は判断をいたしました。
また、政権への参加は私の悲願である、政権交代可能な2大政党制の定着と矛盾するどころか、民主党政権実現を早めることによって、その定着を実現することができると考えております。
四つ、以上の考えにもとづき、2日夜の民主党役員会において、福田総理の方針を説明し、政策協議を始めるべきではないかと提案をいたしましたが、残念ながら認められませんでした。それは、私が民主党代表として選任した役員のみなさまから不信任を受けたに等しいと考えています。よって、多くの民主党議員・党員を指導する民主党代表として、また党首会談で誠実に対応してもらった福田総理に対し、けじめをつける必要があると判断をいたしました。以上が私のコメントであります。
(編集部注:一呼吸おいて、以下の発言)
もう一つ、中傷報道に厳重に抗議する意味において、私の考えを申し上げます。
福田総理との党首会談に関する新聞・テレビの報道は、明らかに報道機関としての報道、論評、批判の域を大きく逸脱しており、私は強い憤りをもって厳重に抗議いたしたいと思います。特に11月3、4両日の報道はまったく事実に反するものが目立ちます。私の方から党首会談を呼びかけたとか、私が自民・民主両党の連立を持ちかけたとか、はては今回の連立構想について、小沢首謀説なるものまでが社会の公器を自称する新聞・テレビで公然と報道されております。いずれも事実無根です。
もちろん党首会談および会談に至るまでの経緯と内容について、私自身も、そして私の秘書等もどの報道機関からも取材を受けたことはありませんし、取材の申し入れもまったくありません。それにもかかわらず、事実無根の報道が氾濫していることは、朝日新聞、日経新聞等を除き、ほとんどの報道機関が政府・自民党の情報を垂れ流し、自ら世論操作の一翼を担っているとしか、考えられません。それにより、私を政治的に抹殺し、民主党のイメージを決定的にダウンさせることを意図した、明白な誹謗中傷報道であり、強い憤りを感ずるものであります。
このようなマスメディアのあり方は明らかに、報道機関の役割を逸脱しており、民主主義の危機であると思います。報道機関が政府与党の宣伝機関と化したときのおそろしさは、亡国の戦争へと突き進んだ昭和前半の歴史を見れば明らかであります。また、自己の権力維持等のために報道機関に対し、私や民主党に対する誹謗中傷の情報を流し続けている人たちは良心に恥ずるべきところがないか、自分自身によくよく問うてみていただきたいと思います。
各種報道機関が1日も早く、冷静で公正な報道に戻られるよう希望をいたします。
(以上が会見における小沢氏の発言)