厚生労働省は6日、国民の代理出産に対する意識調査の結果を、同日開かれた日本学術会議の生殖補助医療のあり方検討委員会に報告した。代理出産は日本産科婦人科学会の指針で禁止されているが、「一般に認めてもよい」と答えた人が54%と、99年に同様の調査を始めて以来、初めて半数を超えた。ただ、妊娠・出産の危険性を理解していない人に容認する傾向が強く、代理出産をめぐる最高裁の決定などが社会的な話題になったことにより、一般の関心が高まったことが影響しているとみられる。
調査は今年2~3月、20~69歳の男女5000人を対象に実施し、3412人(68.2%)から回答を得た。
不妊の夫婦に代わり他の女性が妊娠、出産する代理出産について、「利用したい」という人が9.7%と、前回調査(03年)より2・5ポイント増えた。「配偶者が望めば利用したい」という人を含めると50.6%と、半数を超えた。また、「社会的に認めてよい」と答えた人は54%に達し、99年調査の43%、03年調査の42.5%から大きく増えた。
一方、自分や自分の妻が他人のために代理出産に協力することは、「どんな場合もしたくない」という人が約4割いた。
代理出産では、妊娠・出産という負担を他人に任せる点が問題とされる。妊娠・出産の負担に対する理解度が低い回答者が代理出産を容認する率は、理解している回答者の1.3倍になった。年齢別でも、20歳代の人が容認する率は、それ以上の世代の人より1.6~4倍も高かった。
代理出産をめぐっては、昨年秋、長野県のクリニックで、祖母が孫を産む治療が実施されたことが明らかになった。また、タレントの向井亜紀さん夫妻の代理出産で生まれた双子をめぐる最高裁決定などがあり、メディアで多く取り上げられた。
一方、第三者の精子や卵子、受精卵を使う不妊治療については、「利用したい」や「一般に実施を認めてよい」という人が、いずれも前回調査に比べて減少した。調査を担当した山縣然太朗・山梨大教授は「『夫婦二人の子ども』にこだわる傾向が強まり、代理出産を容認する人が増え、第三者の配偶子を使う不妊治療が避けられる結果になったようだ。ただ、妊娠・出産の危険性を理解していない人や、若い世代に代理出産を容認する声が多く、結果については慎重な分析が必要だ」と話している。【永山悦子】
毎日新聞 2007年11月6日 22時49分