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川崎Fのドーピング違反問題について、Jリーグ全31クラブのチームドクターが18日、連名でJリーグに異例の抗議を行った。体調不良のFW我那覇和樹(26)がにんにく注射の成分が入った点滴を受けたことに対し「正当な医療行為」の説明が不十分だったJリーグ側に問題があったと指摘。後藤秀隆ドクター(39)の治療をドーピング違反とする処分を不服として、再考するよう求めた。
Jリーガーの命を預かる医師たちが立ち上がった。全クラブのドクターの署名入りで、ドーピング違反に関する質問状をJリーグに送付。さらに「全31チーム チームドクター一同」として書かれた、今回の問題に疑問を投げかける文書を報道陣へ公開する人もいた。あるクラブのドクターは「電話でみんなで話し合って決めた。これは31人の総意です」と言った。
4月23日の練習後に38度5分の熱と下痢、食欲低下の症状が見られた我那覇は、にんにく注射の成分でもあるビタミンB1が含まれた点滴を後藤ドクターから受けた。その行為が今季改定されたドーピング規程違反の静脈注射に当たるとして、Jリーグは川崎Fと我那覇に処分を下し、後藤ドクターの処分は川崎Fに委ねることを決めた。
だが、1月21日のドクター連絡協議会で、青木ドーピングコントロール委員長は「風邪などの場合にビタミンの入った点滴を打つのはいい」と説明。各チームドクターから「処分はおかしい」という声が相次いだ。文書では「連絡協議会でのJリーグの説明は不十分。後藤ドクターが処罰されるのは極めて残念」と、リーグ側にも落ち度があったことを強調。連絡協議会の議事録の公開を求めて拒否されたこともあり、一方的な処分の流れに医師仲間の不満が爆発した格好だ。
今回の件を受けて、熱を出した選手に点滴を使えないなど現場は混乱している。「これでは優秀な医師がJリーグに来なくなる」と心配する人もいる。全クラブのドクターによる“抗議行動”に対し、Jリーグがどう対応するのか注目される。
<質問状の概要>
(1)水分補給としての点滴を行う中でビタミンB1の投与を行ったにもかかわらず、Jリーグ側は「にんにく注射」を打ったと公に発表。これは明らかな事実誤認である。
(2)1月21日の連絡協議会では、健康な選手に対するビタミン投与のみを目的とした静脈注射が禁止行為で、病気の選手に対する点滴治療でビタミン剤が同時に投与されることは適正な治療であり、ドーピング違反にならないと認識していた。正当な治療を行ったつもりの後藤医師が後で違反で処罰されるのは残念。基準についてのJリーグの説明がわれわれへ不十分だったのでは?
(3)現状ではドーピング違反に問われない範囲で安心して行える基準が示されているとは言えない。ドーピング違反の規準の明確化を。
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