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社説(2007年11月8日朝刊)

[「普天間」移設協]

住民の目線に立ってこそ

 米軍普天間飛行場の移設に関し政府と地元が話し合う「普天間飛行場移設協議会」が首相官邸で開かれた。

 福田新政権になって初の協議会で、約十カ月ぶりの開催である。

 仲井真弘多知事は、代替施設の建設計画について「まずは(政府が)自主的に沖合に寄せ、アセス手続きの中で、さらに沖合に寄せるよう知事意見が出た場合は、誠実に対応してほしい」と、政府の譲歩を求めた。

 政府は「現行案が基本」との姿勢を崩していないが、「地元の意見を受け止め、誠意をもって協議していきたい」(町村信孝官房長官)と答えている。

 政府はこれまで地元の声を無視し、米軍基地再編交付金をちらつかせながら受け入れを迫ってきた。米国と合意した現状のV字形滑走路案に固執してきたこれまでの姿勢を考えれば、話し合い路線への転換といえるだろう。

 膠着状態が続いていた「普天間」問題が大きな転機を迎えたのは間違いない。

 しかし、輸送ヘリの陸域上空飛行や装弾場などの付帯施設について情報開示が不十分という自治体首長らによる訴えに、関係閣僚は十分な説明をしなかった。

 米軍が配備を決めている垂直離着陸機MV22オスプレイ、大浦湾側に整備されるという二百メートルを超える護岸についてもしかりである。

 政府に対し県民が不信感を抱くのは情報を小出しにするか封印し、新たな情報が常に米側から漏れてくることにある。

 地元への情報開示が不足しているという北部の首長らの指摘を、政府は重く受け止めなければならない。

 県は代替施設の沖合移設を求めているが、それによって実際に何が変わるのか。周辺住民の暮らしへの影響はどうなのか。詳細な情報を提示する責務がある。

 知事の公約である普天間飛行場の危険性除去については、この日の協議会でもゼロ回答に近かった。

 もし、移設まで普天間飛行場をそのままにしておくのなら、場周経路に関する日米合意によっても危険性が除去されるとは思えない。

 次回協議会は十二月中に開かれるが、県、名護市などが歩み寄れば凍結した北部振興事業予算を解除し、基地交付金も検討する方針だという。

 対話路線に隠れた露骨な「アメとムチ」の手法と言うしかない。協議に当たっては、住民の目線に立って不安を解消していくことが国や県、関係自治体の責務である。



社説(2007年11月8日朝刊)

[那覇商議所会頭選]

組織の「公共性」忘れるな

 那覇商工会議所の会頭選任問題が混迷の度を増している。前体制の任期は先月末で切れたが、いまだに新会頭を決められず、解決の兆しも見えない。

 冷めた目で見れば、所詮は「コップの中のあらし」であり、大局に関係ない内輪もめだと言えなくもない。だが、同会議所の会頭は、県経済団体会議の議長を務める慣例があり、県内経済界のリーダー的役割を担ってきた。今後もその重責を担うという前提に立てば、単なる“お家騒動”として見過ごすことはできない。

 県内経済は、雇用のほか空港・港湾整備、米軍基地問題や道州制への対応といった問題を抱える。地盤沈下が叫ばれて久しい国際通り周辺などを含めた中心市街地活性化の問題もあり、課題は山積している。

 依存型経済から自立型経済への脱却もままならず、県内資本の経営環境は厳しさを増す一方だ。土地や企業を含め、「売る」は沖縄、「買う」は県外資本または外資―といった構図も当たり前のようになってきた。

 それら諸課題に真正面から取り組み、地域振興につなげることを期待される組織が商工会議所であるはずだ。

 「個人商店から大企業まで事業規模を問わず、一定の地域にあるすべての商工業者を基盤とし、不偏の立場から経済ならびに地域社会の振興を図ることを目的にしています」。そう掲げているのは、ほかならぬ那覇商工会議所だが、現状はどうだろう。

 会頭に名乗りを上げている現会頭の儀間紀善氏(ジーマ会長)、國場幸一氏(國場組社長)とも企業経営や経済界活動の経験は豊富で、いまさら商工会議所の果たすべき役割などを説くのも釈迦に説法であろう。だが、対立の長期化で、那覇商工会議所および両氏に対する県民の目が厳しくなっていることは認識すべきだ。

 商工会議所は地域性、総合性、国際性とともに公共性を持っている。沖縄を代表する企業が会員に名を連ねる組織だけに、その立場を踏まえた「自浄力」が発揮されることを期待したい。


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