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秋山が“失神”KO勝利/HERO’S
<HERO’S:韓国大会>◇28日◇ソウル市、ジャンチュン体育館◇観衆5289人
【ソウル28日=井上真】秋山成勲(32=フリー)が衝撃の“失神”KO勝利でリングに戻ってきた。強豪デニス・カーン(30)との復帰戦は、1回4分45秒、右のアッパー1発で決着をつけた。昨年大みそかの桜庭和志戦で全身にクリームを塗布して無期限出場停止の厳罰を受けた男が、301日ぶりの試合でみそぎの勝利を挙げた。大みそかDynamite!!での吉田秀彦(38)との対戦も急浮上。再び年末のキーマンになりそうだ。
1回2分すぎ、秋山の圧力に実力者カーンが後退し始めた。「相手が鼻を負傷して、表情が変わった」。冷静に勝負どころを読むと、下がるカーンに右のアッパーを打ち込む。カーンはコーナポストを背に倒れたまま、動かなかった。衝撃的なKO劇。秋山は雄たけびを上げた。マイクを手にハングルで、復帰戦を受け入れてくれた韓国への感謝を伝え、叫んだ。「テーハミング、サイコー」。笑顔の勝利宣言だった。
その顔は試合後のインタビューで激変した。母劉銀華さんへの感謝を口にすると、みるみる涙があふれた。「命を捨ててでもボクを守ってくれる人です。この勝利を伝えたい。長生きしてもらいたいです」。苦闘の日々を支え、励まし続けてくれた母。なんとかこぼれそうな涙をこらえたが、クールな秋山がはじめて見せた素顔だった。
昨年の大みそかの桜庭戦での不注意では済まされない間違いから始まった秋山の1年は、この勝利でようやく未来へと動きだした。それでも本人は自分を戒めた。「あのことにゴールはない。一生ボクの心にあり、十字架として背負っていく問題です」。桜庭への直接の謝罪も果たしていない。カーンを撃破し、弾む心を秋山は表情に出さずに押さえ込んだ。
試合後、谷川EPはDynamite!!への出場を明言した。「僕個人の希望です。(秋山選手の相手として)吉田選手に出てもらいたい」。柔道王との対決で格闘技ファンの夢は広がる。しかし、秋山はトップの言葉にも「ボクは簡単に次の試合を決められる立場じゃないです」と、一からの出直しを強調した。勝者をたたえる賛辞があふれる中、感情を切り替えながら勝利をかみしめる複雑な秋山がいた。
[2007年10月29日8時51分 紙面から]
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