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スポーツアナ 実況席

ヒートアップ! Vリーグ その(2) (by 松本一路)

No.92 2006.02.17

94年に創設されたVリーグの大きな目的は、選手強化です。“バレーボール大国・ニッポン”の再建といってもいいでしょう。現在、その具体的な目標は、男女ともに08年に行われる北京オリンピックへの出場です。とくに男子は、96年のアトランタからシドニー、アテネと、3大会連続でオリンピック出場を逃しています。
ミュンヘンオリンピック(72年)の金メダルから30年の以上の時が流れ、長い低迷期に陥っている日本の男子バレーボールにとって、北京オリンピックの出場は、最大の悲願といっていいのではないでしょうか。

そんな男子バレーボールが昨年10月、タイで開かれたアジア選手権で10年ぶりに優勝を果たしました。「光明が見えてきた」と喜びたいところですが、内実はちょっと違いました。
アジア最大のライバル・中国が、実は北京オリンピックを目指し、若手主体のチームで臨んでいたのです。中国は若手をどんどん登用し、長期展望でいまチーム作りをしている真っ最中なのですね。
一方、日本チームはというと、ベテラン主体のチーム構成でした。荻野正二(サントリー・サンバーズ)、齋藤信治(東レ・アローズ)、マルコス杉山(堺ブレイザーズ)、南克幸(旭化成・スパーキッズ)と、中心になった選手はみんな30代の選手。ベテランの力で勝った大会だったのです。
もちろん「勝つ」ことは非常に大事なことですし、そのためにはベテランの経験も必要です。しかし、私は若手の台頭がないことに一抹の不安を覚えました。08年の北京を見据えるならば、Vリーグから、これらベテラン選手を脅かす若者が次々と飛び出してこなければ、日本は強くなりません。それこそがVリーグ設立の大きな目的だったのですから。

Vリーグにももちろん、イキのいい選手はいます。その筆頭といえば、サンバーズに所属する越川優選手(21歳)ではないでしょうか。アジア選手権にも出場し、ベテラン勢に交じって活躍しました。全日本の植田辰哉監督が「越川抜きのチームは考えられない」と明言する、期待の若きエースですね。松下電器・パナソニックパンサーズの山本隆弘選手(27歳)も、その1人です。201センチの身長を誇る、日本を代表するアタッカーです。しかし、最近は不調で、“眠れる大砲”という有り難くないニックネームまで付けられてしまいました。その潜在能力は、世界でもトップクラスに入ります。もうそろそろ目を覚ましてほしいものです(笑)。
2人とも“イケメン”で、人気、実力ともありますから、これからのVリーグを背負って立つ「2枚看板」といえますね。

まだまだ注目の選手はいます。その中でも私のイチ押しが、堺ブレイザーズの石島雄介選手です。石島選手は21歳で、まだ筑波大学に在籍している大学4年生です。来シーズンから正式にブレイザーズのメンバーに加わるのですが、「内定選手」ということで、Vリーグではその前年のシーズンから試合に出場することができます。出来たてホヤホヤの“Vリーガー”というわけですね。
大学のナンバー1を争う昨年の「全日本インカレ」では、同大学優勝の原動力となり、MVPを獲得。Vリーグ待望の大型選手といえるのではないでしょうか。
身長197センチ、体重100キロ。日本では線の細いバレーボール選手が多い中、ひときわガッチリした体格が目を引きます。愛称は、その体つきから「gottsu(ゴッツ)」。「ごつい」から来ています。ユニフォームの背中には普段、選手の名前が書いてあるのですが、石島選手の場合はこの「gottsu」が誇らしげに書いてあります。越川、山本という「2枚看板」には“イケメン度”では負けるかもしれませんが(失礼!)、みんなから愛される愛嬌(あいきょう)のある選手なのですね。
ポジションは「レフト」。おもにアタックとサーブ・レシーブを担当しています。その日本人離れした強烈なサーブとアタックが大きな特徴ですが、ブロックも器用にこなす万能型の選手といえるでしょう。また普通レフトというと、日本の場合、190センチくらいの選手が多い中、2メートル近い身長を誇る石島選手は、世界でも十分通用するレフトといえます。こんな大きなレフトがいれば、「スーパーエース」と呼ばれるアタック専門の選手の他に、もう1枚強力な大砲がチームにいるようなもので、破壊力はグッと増すわけです。

また、そのプレーぶりがいいんです! アタックに成功すると、大きなガッツポーズを試合中に何度も披露しますし、失敗すると、体全体で悔しがる。そのパフォーマンスの魅力は、ファンをおおいに喜ばせてくれます。先日私が実況した際も、石島選手のプレーに刺激され、「将来の日本のエース間違いなしです! みなさん、石島選手の内定時代のプレーをしっかりと目に焼き付けてください!」と、ついつい絶叫してしまいました。長年Vリーグを見つめ続けてきたプロの私が興奮するほどですから(苦笑)、その魅力は満点! ぜひみなさんにも、応援してもらいたいと思っています。
現役時代、同じレフトのポジションだったブレイザーズの中垣内祐一監督も、「10年に1人出るかどうかの逸材」と、ベタぼれです。石島選手は、間違いなくこれからVリーグの超目玉選手になりますし、そして近い将来、全日本を背負って立つエースの座に上り詰めるはずです。どうぞみなさんも、ガッツあふれる石島選手のプレーを、Vリーグでいまのうちから楽しんでくださいね。
将来、絶対お得ですから!

※コラムに含まれる番組の放送日時や告知の情報等は掲載時のものです。ご注意ください。



松本一路(まつもと・いちろ) 松本一路(まつもと・いちろ)

1971年にNHK入局。その後、野球をはじめ、さまざまなスポーツ中継に携わる。中でもバレーボールとの縁が深く、日本リーグ時代からVリーグに至る現在まで、20年以上、放送を通して日本のバレー界を見つめてきた。NHKバレー実況の第一人者。
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