政府が閣議決定した二〇〇七年版少子化社会白書は、昨年の合計特殊出生率が一・三二と六年ぶりに上昇したが、楽観できないと戒めている。今年一―八月の出生数は前年同期比で三千人以上少ない。
白書は、五五年の日本の姿を、人口が九千万人を割り〇―十四歳の年少人口は10%以下、六十五歳以上が40%以上と予測する。十五―六十四歳の生産年齢人口減少が経済に悪影響を及ぼし、地域の集落維持が困難になると訴える。
少子化の要因は人々が結婚しなかったり子どもをつくらないことだが、白書は結婚や出産の希望は高いとし、希望と実態の間を埋める努力で流れを変えられるとする。
重要なのがワークライフバランス(仕事と家庭生活の調和)の実現、働き方の改革である。今回、少子化対策のためだけでなく若者、女性、高齢者ら全体の働く意欲結実のためにも実現が求められるとした点が目新しい。
問題は現状をどうやって変えるかだ。白書は政府の少子化対策戦略会議での審議や、今後の国の基本指針となるワークライフバランス憲章と政府の行動指針策定などの取り組みを紹介している。
行動指針は先月末、案が示された。50%以下の年次有給休暇取得率を100%に、男性の育児休業取得率を10%にするなどの数値目標を掲げた。だが、推進策となると機運の醸成や社会の意識改革など途端に漠然としてくる。
企業が動きたくても経済情勢や企業間競争の激化でままならない。税制面での優遇措置の整備拡充など行政の具体的後押しが肝要だろう。
それには財源が必要だが、今回の白書を含め国は重点配分などをいっているだけで、この点でも心もとない。