「偽装表示の毒まんじゅう」との言葉が使われました。賞味期限切れの名物の和菓子を販売していた老舗店を連想しそうですが、食べ物の話ではありません。宮城県など地方の五県知事が出した声明です。
政治の世界で「毒まんじゅう」はしばしば、わいろ的な意味、あるいはポストとの交換による駆け引きなどを指して使われます。ただ、今回は少し違いました。東京などの大都市と地方の税収格差を是正しようという国の案に関してでした。
東京などは企業が多く、地方法人二税(事業税、住民税)で潤っていますが、疲弊する地方に一部を回そうというのが財務省などの案です。地方にとって甘いまんじゅうのように魅力的な案に見えます。しかし、これが「毒まんじゅう」だと知事らが批判したのです。
この案で税収が増える自治体も多いものの、それに伴って国からの交付税も削減されるため、効果は薄くなり、地方全体の取り分も減ってしまいます。結局、国が得をするという、地方にとっては偽装表示でだまされたような結果だという指摘です。
岡山県などの試算では、この案に沿って一兆円規模の地方税収を地方同士でやりとりすれば、地方全体では約八千七百億円しか残らず、千三百億円ほどが国に回る計算になります。
本来、地域間の偏在が少ない消費税の地方配分を増やすなど、地方財源の充実・強化につながる制度改正こそが重要です。毒まんじゅうに惑わされず、しっかりとした見極めが求められます。
(政治部・岡山一郎)