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![原田 泰氏 大和総研 チーフエコノミスト](/contents/015/335/766.mime4)
原田 泰氏
大和総研 チーフエコノミスト
執筆者詳細
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第65回「日本の奇妙な生活保護制度」(2007/11/08)
日本の生活保護水準は高い
購買力平価に換算した1人当たりGDPで見て日本とほぼ同じ所得のイギリス、フランス、ドイツの公的扶助額は、日本より2−3割低い。また、日本より所得の高いアメリカの公的扶助額の4地域単純平均は、日本より約2割低い。
イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの公的扶助総額の対GDP比は、それぞれ4.1%、2.0%、2.0%、3.7%であり、日本は前述のように0.3%である。また、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞれ15.9%、2.3%、5.2%、10.0%であり、日本は前述のように0.7%である(以上の数値は前掲埋橋論文による)。
要するに、日本の1人当たり公的扶助給付額は主要先進国の中で際立って高いが、公的扶助を実際に与えられている人は少ないということになる。これは極めて奇妙な制度である。日本に貧しい人が少ないわけではない。同志社大学の橘木俊詔教授は、生活保護水準以下の所得で暮らしている人は人口の13%と推計している(「格差社会」岩波新書、18頁)。ところが、実際に生活保護を受けている人はわずか0.7%である。
私は、日本も、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカのように給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきだと思う。これまで日本で奇妙な制度が続いてきたのは、おそらく、高い給付水準のままで実際の支給要件を厳しくし、保護を受ける人の比率を下げていた方が、給付総額が減るという財政的要請があるからだと思う。しかし、今後、65歳以上の無年金者が続出する中では、現在の制度は維持できないだろう。65歳以上の人は、支給要件の1つである「働けないこと」を容易に証明できるからだ。日本独自の制度をやめて、グローバルスタンダードに合わせるしかないのではないか。
公的扶助を受けている人、1人当たりの手当の水準 | (%) |
順位 | 国 | 対現役労働者の平均所得比 | | 順位 | 国 | 購買力平価換算(給付平均からの差の割合) | 1 | スウェーデン | 83 | 1 | スイス | 91 | 2 | スイス | 81 | 2 | アイスランド | 49 | 3 | ノルウェー | 71 | 3 | ノルウェー | 38 | 4 | ルクセンブルク | 61 | 4 | ルクセンブルク | 32 | 5 | フィンランド | 58 | 5 | カナダ | 26 | 6 | オーストラリア | 56 | 6 | デンマーク | 26 | 7 | 日本 | 54 | 7 | スウェーデン | 17 | 8 | オランダ | 52 | 8 | オランダ | 16 | 9 | デンマーク | 51 | 9 | オーストラリア | 15 | 10 | イタリア | 49 | 10 | 米国 (ニューヨーク) | 8 | 11 | オーストリア | 47 | 11 | 日本 | 1 | 12 | カナダ | 47 | 12 | ベルギー | 1 | 13 | ベルギー | 46 | 13 | イタリア | 0 | 14 | ニュージーランド | 45 | 14 | ニュージーランド | -4 | 15 | 米国 (ニューヨーク) | 45 | 15 | フィンランド | -5 | 16 | 英国 | 43 | 16 | アイルランド | -15 | 17 | ポルトガル | 42 | 17 | 英国 | -19 | 18 | フランス | 41 | 18 | 米国 (ペンシルベニア) | -24 | 19 | アイルランド | 41 | 19 | 米国 (フロリダ) | -27 | 20 | ドイツ | 36 | 20 | フランス | -28 | 21 | 米国 (フロリダ) | 32 | 21 | オーストリア | -29 | 22 | スペイン | 31 | 22 | ドイツ | -32 | 23 | 米国 (ペンシルベニア) | 29 | 23 | 米国 (テキサス) | -40 | 24 | 米国 (テキサス) | 25 | 24 | スペイン | -45 | 25 | ギリシャ | 6 | 25 | ポルトガル | -63 | ― | アイスランド | ― | 26 | ギリシャ | -91 |
(出所) | Social Assistance in OECD Countries, 1996, Volume 1, pp.130, 131, 139 埋橋孝文「公的扶助制度の国際比較」表4『海外社会保障研究』127号、Summer 1999年より引用 |
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