宇宙航空研究開発機構(JAXA)および日本放送協会(NHK)は、平成19年10月18日(日本時間、以下同様)に高度約100kmの月周回観測軌道に投入した月周回衛星「かぐや(SELENE)」から、世界初のハイビジョンによる月面撮影に成功しました。
撮影は「かぐや(SELENE)」に搭載されたNHK開発の宇宙仕様のハイビジョンカメラ(HDTV)によって行われたもので、上空約100kmからの月面のハイビジョン撮影は世界で初めてのことです。
撮影は10月31日に2回に分けて行われ、第1回目は「嵐の大洋」よりも北の位置から北極中心に向かって、第2回目は「嵐の大洋」の西側を南から北へ、それぞれ8分間を1分に縮めて収録しています。「かぐや(SELENE)」で撮影した動画画像をJAXA臼田宇宙空間観測所にて受信し、その後、NHKにおいてデータ処理を行いました。
なお、臼田宇宙空間観測所で受信したテレメトリデータにより、衛星の状態は正常であることを確認しています。
「かぐや(SELENE)」からハイビジョンカメラ(HDTV)により撮影された月面
(1)北極付近 (第1回目撮影の動画より切り出し)
「嵐の大洋」(注1)よりも北の位置から北極中心に向かって「かぐや(SELENE)」が飛行中に撮影した動画の中から静止画として切り出したものです。
北極に近く緯度が高いため、太陽光線の射し込む角度が低くなり、クレータ地形の影が長く映っています。
この動画は、平成19年10月31日4時7分(日本時間)に「かぐや(SELENE)」から8倍の間欠撮影(8分間を1分に縮めて収録)で撮影され、同日、JAXA臼田宇宙空間観測所にて受信しました。
(注1)「嵐の大洋」:月の表面の暗く見える「海」と呼ばれる部分で、地球から見える月の表側の北半球左端に位置します。
(2)「嵐の大洋」の西側 (第2回目撮影の動画より切り出し)
「嵐の大洋」の西側を南から北へ「かぐや(SELENE)」が飛行中に撮影した動画の中から静止画として切り出したものです。
画面右側の暗い部分が「海」(「嵐の大洋」)、左側の明るい部分が「高地」と呼ばれている部分です。
この動画は、平成19年10月31日5時51分(日本時間)に「かぐや(SELENE)」から8倍の間欠撮影(8分間を1分に縮めて収録)で撮影され、同日、JAXA臼田宇宙空間観測所にて受信しました。
(3)「嵐の大洋」の西側 (第2回目撮影の動画より切り出し)
(2)の動画の終わりの部分を静止画として切り出したものです。
画面中央手前に「レプソルト」と呼ばれる直径約107kmのクレータが見えます。このクレータを横切る溝は「レプソルト渓谷」と呼ばれ、長さ約180km(東海道本線の東京−静岡間に相当)にも及びます。この動画の撮影時間等は(2)と同様です。
参考
(1)第1回目撮影
− 北極付近の撮影範囲(青枠)と「かぐや(SELENE)」の軌道(赤線) −
(2)第2回目撮影
− 「嵐の大洋」の西側の撮影範囲(青枠)と「かぐや(SELENE)」の軌道(赤線)−
地図出展:USRA
http://www.lpi.usra.edu/resources/mapcatalog/LMP/
ハイビジョンカメラ(HDTV)の外観(「かぐや(SELENE)」搭載前)