X JAPANが日本のビジュアル系の豊かさを生んだ

 最後に、J-POPのビジュアル系の元祖といえるX JAPANについて語りたいと思います。ビジュアル系の魅力はヘビメタを軸にしながらも、実はものすごく音楽性の幅が広いことだけど、それはX JAPANの功績が大きいと思うからです。

日本のビジュアル系の原点。89年メジャーデビュー、97年解散。今年、一時的な再結成が発表された。(画像クリックで拡大)

 X JAPANは、『Silent Jealousy』みたいな超攻撃的で超高速な曲を発表したかと思えば、その直後に『Say Anything』みたいな超ベタなバラードをリリースしてきたじゃん。これって本当はあり得ないことなんです。

 というのも、一人の人間が気持ちいいと感じる曲の速さ、違う言い方をすると曲調というのは、ある程度の幅に収まるからはずだからです。

 だから『Silent Jealousy』と『Say Anything』みたいに超幅のある曲を、作れるアーティストもすごいし、受け入れるファンもすごい。X JAPANが、ビジュアルイメージをもとに、サウンドもブランドとして確立していた証拠です。最近のビジュアル系バンドも、そこを目指している人は多いんじゃないかな。

 それにしてもYOSHIKIのツーバス(左右の足でバスドラムをたたく技術)は尊敬です。誰よりも速く、誰よりも長くドラムをたたきます。ものすごい瞬発力とスタミナじゃん。しかも、おしゃれなサウンド。こんな人、ほかにはいないと思います。昔はツーバスをやる人ってアマチュアが多くて、プロには少なかったんだけど最近は増えていて、特にJ-POPには多い。この現象もYUSHIKIの影響かもだね。

 X JAPANは復活するみたいだけど、X JAPANは僕が日本に興味を持つきっかけとなったアーティストの一人です。だから本当に、超本当に復活が楽しみです。

※次回更新は、11月21日を予定しています。プロデューサーとしての「福山雅治」の才能をメタル斬りする予定です。ご期待下さい。

著者

マーティ・フリードマン

 アメリカ・ワシントンDC出身。世界でアルバム1000万枚を売り上げたメガデスの全盛期のギタリスト。J-POPに造詣が深く、日本語も堪能。現在は東京を拠点に、音楽活動のほか雑誌やテレビで活躍中。日経エンタテインメント!の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページは英語版日本語版がある。この春のヨーロッパツアーを収録したライブCDと、5月の日本公演を収録したライブDVDが発売中。プロデュースに参加した北出菜奈のシングルコレクションアルバム『Berry Berry SINGLES』が11月14日に発売。