ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン福島> 記事

修学旅行、皆で

2007年11月07日

 柔道部の練習中に倒れて以来、意識が戻らない須賀川市の少女(17)が今月中旬、修学旅行に出かける。生まれて初めて飛行機に乗って、大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)へ。「外に出て、多くのものに触れる経験をさせてやりたい」――。両親、そして関係者の熱意が実現に結びついた。(古田真梨子)

 少女は須賀川市立第一中学の1年生だった03年、柔道部の練習中に頭を打って倒れた。意識が戻らないまま06年、郡山養護学校に入学。現在は同校高等部の2年生だ。
 事故から約2年後に退院した少女は、両親が介護のために増築した部屋で療養している。食事は流動食で胃に通した管から取っている。年に数回、演奏会などの学校行事の時には母親(44)やホームヘルパーが付き添い、出席してきた。

 同校の修学旅行の行き先はここ数年、大阪市。父親(51)は飛行機で行くと聞き、「最初は『うーん』と。しかし、高校を出ると外部との接触が今より減ってしまう。飛行機に乗ることも、この機会を逃すと一生ないかもしれない。行かせてやりたいと思った」。

 学校側も「ぜひ、みんなで一緒に行きたい。協力します」と応じたという。

 両親は1月、USJに下見に出かけた。巻き尺で通路やトイレのドアなどの寸法を測りながら、少女が楽しめる場所を探した。「残念ながら、娘が車いすのまま入れるアトラクションは少なかった。でも、園内を散歩して雰囲気を楽しむことはできる」と話す。

 日本航空も全面的に協力する。福島空港で少女を飛行機に乗せ、離陸するまでの時間はわずか20分。少女と母親、養護学校の先生たちが立ち会う中、数回シミュレーションを行い、安全に乗り降りできる方法を探した。

 当日は、少女を車いすからストレッチャーに移し、機内の通路を抜けて後部座席へ。一番後ろの席を9席分倒して簡易ベッドを設置し、そこに少女を寝かせるという。旅行には先生や母親のほか、普段から少女の世話をするホームヘルパー2人が同行する。

 「飛行機に乗るんだよ。楽しみだね」。母親が枕元で話しかけると、少女はパチパチとまばたきをして喜んでいるように見えた。

 父親は「マニュアルも何もない中で、実現にたどり着いた。障害があっても、旅行に行くことができるという先例になれば」と成功を願っている。

 ■校長や顧問の証人尋問申請/賠償訴訟で原告側

 須賀川市立第一中学校で03年、柔道部の練習中に起きた事故で、意識不明となった当時1年生の女子生徒の両親らが、市や県、女子生徒を投げた元部長の少年とその母親に総額約2億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の第8回口頭弁論が6日、地裁郡山支部(見米正裁判長)であった。

 原告側は、いずれも当時の校長=3月に定年退職=や柔道部顧問の男性教諭、副顧問の男性講師、元部長の少年らに対する証人尋問を申請した。

 原告側は、事故は学校が安全への配慮義務を怠ったのが原因としており、「事故当日、何が起きたのか」「事故後どのような経過をたどったのか」などを明らかにしたいとしている。一方、被告側は女子生徒を診断した医師らへの尋問を申請した。

ここから広告です
広告終わり

このページのトップに戻る