■賛否両論の行方は・・・
|
|
保坂「きょうは、我々の生活に直結する医療制度、中でも、健康保険について考えます。まず、今何が話題になっているんですか?」
古川「小泉内閣はあらゆる分野で規制改革に取り組んでいますが、医療の分野でも例外ではありません」
|
|
|
古川「現在の医療制度では、医師の診察を受けた場合、診療費の3割は自己負担ですが、ほとんどが健康保険で支払われます。これが、保険が適用される今のパターンです」
|
|
 |
|
 |
古川「ところが、例えば『ガンの患者が、保険で認められていない抗がん剤を使った治療を受けた場合』は、本来保険が適用される入院費や検査費まで含めて、費用全額が自己負担になってしまいます」
|
|
|
古川「これを『保険が利く部分は保険でまかない、保険が利かない部分だけを自己負担してもらおう』というのが混合診療です。今は禁止されていますが、これを認めようという動きがあって、規制緩和を訴える小泉総理や企業・大学病院が賛成していますが、厚生労働省と医師会は反対しています」
|
|
 |
|
|
11月25日、大阪市内で医療関係者や市民が参加して、混合診療の解禁に反対する大規模な集会がありました。医師会が反対する訳は、この保険外診療(自由診療)の部分は規制がないので、医療と称して何でもかんでも入り込んできます。このため、安全性が疑わしい医薬品や診療方法がはびこり、患者の健康被害が広がる危険性があるというわけです。
さらに、保険が利かないこの保険外診療部分は患者が自己負担しなくてはならず、お金持ちだけが充分な医療を受けられることになります。それは、誰でも平等に適切な医療を受けられる皆保険制度の崩壊に繋がります。
|
|
【反対派 大阪府医師会 茂松茂人理事】
「医師としては全く反対。これを賛成すると、国民の健康というのが阻害されてしまう。自由診療の部分が伸びて自己負担が増えるから、お金があれば良い医療が受けられる。なければそれなりの医療という状態が出てくる」
|
|
 |
|
 |
一方で、混合診療の推進派は、「患者の様々なニーズに対応するために必要だ」と反論しています。
【賛成派 規制改革・民間開放推進会議 鈴木良男議長代理】
「混合診療が認められれば、自由診療分だけを自分で持てば、その他は保険が出してくれるから、むしろお金のない人がそういった高度な医療を受けられる。だから、不公平感は是正されると考えてほしい。『混合診療はお金持ち優遇だ』とはとんでもない勘違いだ」
|
|
|
|
保坂「どちらの意見も筋が通っているような気がしますね」
古川「保険外診療の部分をどう解釈するかで意見が分かれています。この部分をプラスに考えると賛成派のような言い分になり、マイナスに考えると反対派に言い分になるというわけです」
保坂「結局、どちらに決着するんですか?」
古川「議論は平行線のままですが、小泉総理は混合診療を認めるという方向で、今月中に決着するように指示しています」
|
|
|
古川「この問題は、そもそも保険が利かないような病気に直面しないとわかりにくい議論ですが、混合診療の背景にはこんな見方があります。医療経済学の教授の話をお聞きください」
|
|
【京都大学医療経済学 西村周三教授の話】
「高齢化社会を迎えて、これから医療が国民にとって大きな意味合いをもつから、産業としても非常に重要。したがって、経済界がこの分野に入ってきて、医療をビジネスとして考えたい。もうひとつは、今まで大部分を医療保険でカバーしてきたわけだが、医療保険財政が非常に厳しくなってきているので、ある程度自己負担、自分でお金を払える人が払って医療をやっていく方向を考えざるを得ない」
|
|
 |
|
保坂「キーワードは『医療ビジネス』と『国の財政難』ということですね」
古川「国が財政難のため、公的な医療費はもう増やせないとなると、自由診療の部分を膨らませて医療費にあてるしかありません。これは患者の自己負担だから、お金になります。患者が自腹で払う部分が増えれば、民間の医療保険会社なども入り、ビジネスチャンスが生まれ、医療分野の市場もどんどん広がっていく。つまり、経済の活性化につながると。これが混合診療の影に見え隠れする本音の部分だと思います」
|
|
|
保坂「病気はいつ誰の身にふりかかってくるのかわからないから、『保険制度を作って病気になった時に守りましょう』という話なので、もっと国民全体で活発に議論するべきですね」
古川「ところが、現実はほとんど国民側に情報が伝えられず、国民を置き去りのまま、この年末までに政府内で粛々と決まってしまうという事態になりかねませんね」
保坂「混合診療をみなさんはどう考えますか?時流でした」
|
|
|