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どうする地域の足 県南路線バス廃止 現場から

 

 

 羽後町の西端に位置する軽井沢地区。児童館前の停留所に、午後0時45分発の乗り合いバスが待機していた。

湯沢市と羽後町とを結ぶ軽井沢線の軽井沢停留所。利用者が激減し、来年3月末で西馬音内―軽井沢間が廃止される

 中心部の西馬音内から20キロほど離れた農山村。湯沢市とを結ぶ便が日に3往復ある。西馬音内方面へと折り返す便の車内に乗客の姿はなかった。「日中の便でここ(始点)から乗る人はほとんどいない。回送と同じ」。キャリア40年の男性運転手はそう話し、空のバスを発車させた。

 羽後交通は、羽後町内を走る軽井沢、田代、新成の3路線の西馬音内以遠と仙道線の久保―上桧山間を、来年3月いっぱいで廃止する。

 今年7月の利用者実態調査によると、廃止区間の1便当たりの乗客数はいずれも、単純平均で1人に満たなかった。軽井沢の停留所前で商店を営む安倍恭子さん(57)は「高校生は親が送り迎えし、町内の病院や医院も毎週、送迎バスを走らせている。正直、バスに乗る人は少ない」と話す。

 同停留所近くに住む高橋ハルさん(59)は月に2、3回、西馬音内の病院への通院に路線バスを利用している。「全くなくなるのは困る」と高橋さん。夫の幸夫さん(67)も「自分もいつまでも車が運転できるわけではない。何らかの形で継続してほしい」と口にした。

 羽後交通の廃止方針を受け、町は廃止対象の全地域で説明会を実施。2度の地域公共交通会議を経て、バス路線の一部廃止に同意するとともに、代替措置を講じることを決定した。「唯一の公共交通機関であり、なくなるのは困る、との住民の声が強かった」と町総務課は説明する。

 軽井沢、田代、新成の3路線の代替交通について、町は6カ月の試行期間を設け、業者に委託して何らかの車両を運行することを検討している。試行期間中に利用実態を把握し、よりよい交通手段を模索するのが狙い。仙道線はスクールバスでの対応を考えている。町は今月下旬に開かれる3回目の地域公共交通会議に諮り、合意を得たいとしている。

 「選択肢はいろいろあるが、車両購入などしても利用者が少ないとなれば、投資が無駄になってしまう。利用実態によっては、福祉対策としての対応ということもある。何が一番便利で予算的にも安いのか、半年かけて検証する」と同課。

 町は代替交通の検討に際し、廃止地区に住む1人および2人暮らしの65歳以上を対象に、路線バス利用に関するアンケートを実施した。その結果、路線バスの利用頻度は「週に1回」と「月1、2回」で大半を占め、利用目的は「通院」50%、「買い物」40%の順だった。大江尚征町長は「住民の生活の足を奪うことはできない。必要な人がいる限り、形態がどう変わろうと交通手段は確保しなければならない」と強調した。

2007.11.7付

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