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2007-11-06

再読 「ダビング10」はコピーワンスの緩和か

もやもやしているので、もう一度読み直しました。

「ダビング10」はコピーワンスの緩和か (ITmedia +D LifeStyle)

この中で紹介されている2つの議事録を細かく読みました。

http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent/pdf/061121_2.pdf

http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent/pdf/061127_2.pdf

読み方としては、次のポイントを押さえました。

  • 日米のデジタル放送と著作権管理技術について基本的な知識を持っていること
  • 各委員・オブザーバーなどの所属と知識レベルの推定をあわせて行うこと

最初は椎名氏の次の主張が正しいと仮定して、JEITAの中でDTCPに関連する誤解を広めた犯人が誰だろう? という観点で議事録を読みました。

11月までの議論では、JEITAは「DTCPのステータスは『コピーフリー』『コピーネバー』『コピーワンジェネレーション(COG)』『EPN』という4つのステータスしかなくて、コピーワンスを緩和するにはこのステータスにもう1つ新たなステータスを加える「申請」をしなければならないという説明を再三消費者の方々にしてきたわけですが、この時点で「その説明は事実と違いましたね?」という話になっちゃったんですよ。

ところが、上の議事録を読む限り、特定の会社の委員が誤解している事実は見当たらず、むしろどの会社の委員も同じ認識を持っています。

そこで、椎名氏の発言自体も吟味する必要があると考え、議事録の内容を詳しく技術的に確認しました。メーカー側の委員の発言内容は、私が以前から理解している内容と大体一致しています。論点を整理すると、

  • 椎名氏は、EPNはコピー数を制限しないから不適当だと主張している
  • 家電のHDD/DVDレコーダーについて、事実は次の通りのはず
  • PCのデジタルテレビ機能について、事実は次の通りのはず
    • PCのデジタルテレビ機能は、DVDメディアに書き込む際にハード(PC)の鍵を利用する
    • メディアごと(物理的に)第三者に渡しても、第三者はそのメディアを再生できない(コピーもできない)
    • PCのデジタルテレビ機能は、EPN対応の場合に限り何枚でもDVDメディアを書き込みできる(枚数制限なし)&ただし他のPCやレコーダーでは再生できない(実質強力な制限がかかる)
    • PCのデジタルテレビ機能は、現在のムーブ機能の場合に限り1枚(または2枚)DVDメディアを書き込みできる
    • (議論の中でPCは無視されているようなので、これ以降も無視します)
  • 放送番組がチューナーまたはレコーダーに内蔵されるHDDに保存された時点では、ノー・モア・コピーである(ARIBの規定)
    • 米国では放送番組がチューナーまたはレコーダーに内蔵されるHDDに保存された時点では、COGらしい
    • 椎名氏はこの点を見つけて大騒ぎしていたらしい
    • メーカー側委員も放送局側委員もノー・モア・コピーと認識していたので、知らなかったのは椎名氏と河村氏くらいだったようだ
    • 椎名氏は、HDDにCOGで保存するように仕様を変えるか、または機器内でのHDD→DVDメディアの書き込み仕様を変えるように主張していた
    • 機器内の仕様変更は、ARIBの運用規定の変更のみで対応できる(法制度や行政対応の変更やDTCPの変更は不要
  • 椎名氏は著作権管理技術をほとんど知らないように見える
    • 椎名氏のユニークな発言が何度も出てくるけど、技術を知らないためにいえる発言だろう
    • メーカー側の委員と話がかみ合わないのはそのためではないか(私見)
    • 放送局側の委員も著作権管理技術について不安そうな面が見える
    • インテルさんはわざわざ4人で出席したのに、PCにおける活用についてはこの時点ではどの委員にもまったく意識されていないようだ
  • ARIB/D-PAが誤解していたかもしれない点
    • ARIBにおけるHDD内蔵機器(チューナー・レコーダー)のHDDは、DTCPのPVRに相当する? (インテル回答は未確認)
    • ARIBのチューナー・録画機器内の「バス」はDTPCを通す必要がある? (インテル回答は否定)
      • DTCPが規定するバスは、機器の外部で接続するIEEE1394に限定
      • 機器の内部の接続は、ARIBで規定するもの
      • 前にCPUのバスもPCIもPCIxもAGPもバスだからDTCP暗号化が必須とARIBに言われていたのは一体?
  • 地上デジタル放送のコピーワンスの規定を作成したのは、D-PAとARIBの協同作業
    • つまり、放送業界とメーカーの両方が参加している
    • ARIBはJEITAとは別の組織であるから、同一視するのは事実に反する
    • もしARIBとJEITAが同一という主張が通るのならば、D-PA(RMP協議会)は権利者団体と同一とみなせるだろう

上の2つの議事録を読む限り、椎名氏が自らの無知にもとづいて議論をかく乱していたように見えます。もちろん、詳しい経緯や状況が各委員に公表されていなかったことが根本的な原因でしょう。

あと、ARIBの関係者が実装レベルの技術あるいはDTCPの解釈を誤っていた可能性を否定する材料はありませんでした。

とはいえ、さらに根源に遡れば、全放送をスクランブル化することでD-PAが受信機やレコーダーの販売の可否までをコントロールできるようになった仕組みそのものが招いた事態であることは間違いないでしょう。米国やEUと違って、放送局や番組毎に『コピーフリー』『コピーネバー』『コピーワンジェネレーション(COG)』を区別することができず、すべて一律に『コピーワンス』の対応しかできない放送局と権利者団体の問題じゃないのかなあ?*1

*1:ただし、話を根底から覆すことは椎名氏の主張と同じ効果を引き起こすし、新しい機器の販売までに2年以上かかる恐れが高く、市場に混乱を招くので推奨できない。

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