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書評

ウェブ炎上 ネット群集の暴走と可能性 [著]荻上チキ

[掲載]2007年11月04日
[評者]香山リカ(精神科医、帝塚山学院大学教授)

■暴走のメカニズムを解明

 インターネットの企業や官庁、個人のホームページあるいはブログ(日記形式のサイト)に非難が集中し、ときには閉鎖にまで追い込まれる。ネットの世界では「炎上」と称されるこの現象は、なぜ起きるのか。そもそもネット閲覧はひとりでするものなのに、なぜある時点から集団暴走が起きてしまうのか。

 本書では、「炎上」のメカニズムが丹念に解き明かされていく。その原因のひとつ、「サイバーカスケード」とは、最初は個人の考えや発言であったものが、結果的に集団として極端なパターンに流れてさらなる集団行動を引き起こす、というネット特有の現象を指す。しかし、極端化はいつもネガティブとは限らず、「遺失物を探せ」などポジティブな行動につながることもある。

 次々と紹介される「炎上」の実例を見ながら、そこに可能性を感じるか恐怖を感じるかは、その人次第。著者のスタンスは中立的で、まず「実態を把握することが必要」と言っている。ただ、「炎上」の被害を受けた経験のある人にとっては興味津々のテーマだろうが、ネットを利用しない人にとっては、これ全体が「存在しない世界の話」かも。その乖離(かいり)が、最大の問題なのではないだろうか。

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