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日本代表として練習試合に出場し3安打を放った新井。FAでの阪神入りが濃厚となった [写真を拡大]
フリーエージェント(FA)権を取得し、動向が注目されていた広島・新井貴浩内野手(30)が他球団への移籍を前提に、権利の行使を決意したことが6日、分かった。新井は広島との交渉で残留を要請されながら態度を保留していたが、関係者の話を総合すると「優勝争いがしたい」というかねてから語っていた希望実現のために、決断に至った。新井は7日にも行使を表明するが、阪神が獲得に乗り出すとみられ、「阪神・新井」誕生へ大きく前進することになった。
悩みに悩み抜いた決断だった。永遠に答えの出そうにない選択に見えた。最後には「優勝したい。優勝争いがしたい。しびれるような舞台に立ってみたい」これまで何度も繰り返した戦う男の本能が決め手となった。FA宣言して、優勝争いができる球団へ―。新井がまさに断腸の思いで導き出した結論だった。
8月21日に権利を取得してから心は揺れた。クライマックスシリーズ、日本シリーズをテレビ観戦するたびに「あのような戦いがしてみたい。舞台に立ってみたい」と、焦がれる思いは抑えきれなくなった。反面、立派な4番打者に育ててくれた広島への愛情は言葉に尽くせないほどだった。
もともと、地元育ちの、生粋のカープファン。FAについて考え始めてから、「車で走っていて、カープの帽子をかぶっている子どもを見かけたりすると、いたたまれなくなる」と胸が痛かった。自身の少年時代と重なり、FA宣言の決意はそのたびに鈍った。
決断を後押ししたのは、実は限られた時間だった。申請期限は今月12日に迫っている。7日で北京五輪アジア予選日本代表最終候補の神戸自主トレは終わるが、11日には再び宮崎キャンプに出発する。球団は8日にも記者会見を準備する。関係者によれば、チームの大黒柱・黒田のFA宣言も影響したのか、「優勝争い」という目的のため、今までと違う世界に飛び出す決断に至った。
2年前のホームランキング獲得に真っ先に名乗りをあげるのは、右の大砲獲得が急務の阪神だ。今季はチーム打率、総得点が12球団最低という貧打に泣かされた。シーツは退団確実で、2年前の首位打者・今岡も本調子からほど遠い。一、三塁のレギュラーが不安定な状態だ。さらに、期待の桜井もシーズン終盤に左ひざを故障。打線は左ひざ手術を受けた金本に頼らざるを得ない現状を、何としても打破しなければならなかった。
阪神ではヤンキースにポスティング移籍した井川の入札金約30億円も獲得資金に投入する意向で、他球団を大きく上回る4年10億円の条件を用意して、待望のスラッガーを迎え入れる構えだ。現状では他球団が争奪戦に参加する気配もなく、すんなり縦じまのユニホームを着ることになりそうだ。「アニキ」と仰ぐ師匠・金本との師弟関係も阪神入りへ大きな材料となるはずだ。
球団はFA宣言しての残留を認めているが、新井は「宣言しての残留はないと思う」と、すでに権利行使が、すなわち移籍を意味する発言をしている。新井の今回の決断で広島は、黒田とともに、投打の柱の流出が確実な情勢となった。
◆新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年1月30日、広島市生まれ。30歳。広島工では3年夏の県大会ベスト16が最高。駒大では4年秋に打点王とベストナインを獲得。98年ドラフト6位で広島入団。2005年には6試合連続本塁打を放つなど、43本塁打で本塁打王を獲得。06年には自身初の100打点。今年も102打点をマークした。家族は妻と2男。189センチ、95キロ、右投右打。
(2007年11月7日12時19分 スポーツ報知)
〔野球コラム〕