福岡市東区で昨年8月に起きた飲酒運転3児死亡事故で、危険運転致死傷罪などに問われた元同市職員今林大(ふとし)被告(23)に対する論告求刑公判が6日、福岡地裁(川口宰護裁判長)であった。検察側は「同種事案で類を見ない悲惨な結果を招き、法が許す最高刑で臨むほかない」として、道交法違反(ひき逃げ)罪と併せた最高刑の懲役25年を求刑した。20日の弁護側最終弁論で結審し、判決は2008年1月8日の予定。
公判の最大争点は今林被告の酔いの程度。
検察側は論告で「事故前後の言動から酩酊(めいてい)状態は明らか。アルコールの影響で正常な運転ができなかったことは疑いの余地がない」と指摘した。さらに「制限速度の倍の時速約100キロで走行し、約230メートル後方から被害車両を視認できる状況にありながら、直前まで気づかずに衝突させた」と、アルコールの影響を強調した。
弁護側は事故原因の1つとして被害車両の低速走行を主張しているが、検察側は「鑑定結果や被害者の証言から急制動をかけた事実はなく、速度は時速50キロだった」と否定。今林被告が事故後に逃走を図り、ペットボトルの水を飲んだ行為については「自己保身や証拠隠滅に奔走し、卑劣の極み」と断罪した。
最高刑の求刑について検察側は、被害者側に落ち度がない上、3児の両親に「救いは犯人の男に子どもたちが被った苦しみや悲しみに相当する厳重な処罰を科す以外にない」と望む「激烈な処罰感情」があるとした。
起訴状によると、今林被告は昨年8月25日夜、海の中道大橋を飲酒運転し、大上哲央(あきお)さん(34)一家5人が乗る多目的レジャー車(RV)に追突。車ごと海中に転落させ、長男紘彬(ひろあき)ちゃん=当時(4つ)、二男倫彬(ともあき)ちゃん=同(3つ)、長女紗彬(さあや)ちゃん=同(1つ)=の3児を死亡させたとされる。
=2007/11/07付 西日本新聞朝刊=
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