デピレーザー1(Depilaser1)

レーザー脱毛の本文(こちらの最下端)に「メールでお問い合わせいただければ、お知りになりたい機械が永久脱毛可能なものかお調べいたします」と書いておりますが、家庭用のレーザー脱毛機で問い合わせが一番多いのが「デピレーザー」です。

「デピレーザー」には、「デピレーザー1」と「デピレーザー・プロ」があるようです。
製造元であるヤーマン株式会社のホームページには「デピレーザー1」の写真だけが載っているだけでレーザー脱毛の部門は現時点で工事中のため、両者の違いについて詳しい情報は得られません。以前に電話で問い合わせた際には、ハンドピースに違いがあるがレーザースペックは同じであると伺いました。こちらの通信販売のページには「デピレーザー・プロ」の説明がありますが、私は「デピレーザー1・タッチセンサー付」というものを選びました。9万8千円でした。

家庭で一般の人が使用する際に、私が最も危惧するのは効果の有無やヤケドの頻度もさることながら、誤って目に向けて照射した際の失明です。どのような失明防止対策が施されているかがとても重要だとおもうのです。ハンドピースの先端に触れたときにのみレーザーが出るように工夫されているということが選んだ理由です。


全体写真です。本体とハンドピースから成っていて説明用のビデオテープもついていました。

さて、レーザーで永久脱毛ができるか否かはレーザー脱毛の原理に書きましたように、波長・照射時間(パルス幅)・出力の三つが適正であるかによります。説明書には波長と出力の記載がありません。機械から出るレーザー光線の強さは常に一定で、照射時間を変えてエネルギー量を調整するようです。その照射時間ですが、1秒〜9秒の間に設定できます。太い毛は1〜2秒、細い毛は3〜4秒が目安だそうです。
強いエネルギーを1000分の30秒程度で一気に与えるのが脱毛の原理です。機械のパワーがないから長時間照射してエネルギーを稼ごうとしているのだとおもいます。パワーのないSLPが照射時間(パルス幅)を長く設定したのと相通ずるところがありますが、それにしても1秒以上というのは理論を無視しています。

では、実際に操作してみましょう。

取扱説明書に従って、照射時間は標準的な4秒(写真の)としました。


ハンドピースの先端です。照射中にハンドピースを覗きこんで失明するというような事故を防止するために、皮膚が金色のセンサー部分から離れるとレーザー照射がとまるように工夫されています。(銀行ATM等のタッチパネルの応用です)
でも、子供が遊び半分でいじっているうちに、センサー部に触れたまま、覗きこんで照射するようなことがあれば大変危険です。


ということで、このような警告シールがハンドピースに貼られています。

では、電源をいれて動かしてみましょう。湿らせた紙を皮膚に見立ててビデオ撮影しましたのでこちらをクリックしてください。ビデオで分かることは、
1) センサー部に触れたときにのみレーザーが照射される。
2) しかし、センサー部に触れながら覗きこむことは可能である。
3) ビデオではカメラの受光感度が良いのでレーザーのスポットサイズが分かりにくいのですが、実際のサイズは写真のように、とても小さなスポットです。拡大して測ると 0.7mm X 0.35mm くらいですから、面積は 0.00245cm2となります。

レーザー光は皮膚に対して直角に照射されるべきですが、実際に照射されているときはセンサー部が皮膚に覆いかぶさっていますので、皮膚のどの部分が照射されているのか見当がつきません。確かめようとして傾ければ斜めに照射してしまいます。
このレーザー光線の波長と出力は不明ですし、照射時間(パルス幅)も長すぎますので、永久脱毛が可能かどうかには大いに疑問があります。例え、できるとしても、上記のように照射スポットは、とても狭いです。狭いスポットを的確に1本の毛根に当てるのは至難の技であるということは容易に想像できます。

製品についている取扱説明書を見てみましょう。

1/3くらいずつずらしていって、どうして0.00245cm2という狭いスポットで皮膚全体をカバーできるのでしょうか?
できるわけがありません。


「2〜3ヵ月おきに3〜4回の処理でパーフェクトな脱毛ができる」というのは、永久脱毛ができる適正な波長・照射時間(パルス幅)・出力波長をもったレーザー光線で、「照射もれ」がなくて皮膚全体をカバーできたとしてのことですから、この説明には無理があると言わざるをえません。


ものは試しということで指に照射してみましたが御覧のようにヤケドが起きてしまいました・・・・。(照射の翌日の写真)

2001年4月12日


ある人から次のようなコメントをメールでいただきました。

市販用のレーザー脱毛器「デピレーザー」の結果は私もはなはだ疑問がありました。
実際に私も去年購入し、髭の脱毛を試みたのですがまったく効果はなくて、むしろ、色素沈着やひどい火傷を負ってしまいました。
脱毛効果は皆無でしょう。専門医である高橋医院のことをその時はしらなかったので、悔やまれて仕方がありません。

2001年4月18日



この機械のレーザースペックに関して、アメリカの専門家に測定を依頼していたのですが、やっと判りました。
「あまりに弱すぎて手持ちの測定器では対応できないので別の機関から借り受けるので時間がかかった」とのことです。

波長: 811nm、 永久脱毛できる波長です。
パルス幅(1発の持続時間): 冒頭でも書きましたが、1秒〜9秒の間に設定できます。
スポットサイズ: 0.30226mm X 0.22987mm(0. 0119 inches x 0.00905 inches)の長方形、 すなわち 0.0006948cm2です。これは私の肉眼による概算(0.00245cm2)よりも遥かに小さなものであったということです。(私は黒い紙を燃やして、開いた穴の大きさを肉眼測定したので実際の精密測定とは異なるようです)
出力: 0.57ワット、 1秒間だけ照射した際に皮膚が受けるエネルギーは F = P X T / A という計算式を使います。F = Fluence (J/cm2) P = Power (W, Note that Watts is simply energy per second or J/s) T = Time (s) A = Area of spot (cm2)
この計算式にあてはめると、 820J/cm2となります。パルス幅を2秒に設定すれば1640J/cm2になります。これこそまさに私のいう「生卵ゆで上がり時間(TRT=Treating Raw egg Time)」によるごまかしです。(TRTに関しては、こちらのページの末尾を御覧ください)
この機械のパルス幅が適切なものだったらどうなるでしょうか。例えば、私が使用しているLightSheerと同じく1000分の30秒であれば、24.6J/cm2となります。

「なんだ、じゃあ、十分に永久脱毛できる出力じゃないですか」という声が聞えてきそうです。
ところが違うのです。スポットサイズが小さくなれば、より出力を上げなければ同じ効果が期待できないのです。その説明を始めるととても長くなりますので、項をあらためて、別の機会に述べたいとおもいます。

2001年5月3日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之