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2007年10月31日放送 |
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今回の番組について今や日本の食卓の定番メニュー「パスタ」。最近では、本場の食材もスーパーで簡単に手に入るようになりました。 でも、レシピ通り作っているはずなのに、プロの作るおいしいパスタと比べると、何か物足りないと感じることはありませんか? そこで、超一流のイタリアンシェフの技を徹底分析。すると、実はパスタの麺には、従来の「アルデンテ」の概念をさらに超えた究極の調理法が存在することが判明! よくある家庭の一品を、麺とソースが絶妙にからみ合った、別次元のパスタに大変身させる極意を徹底追求します。 アルデンテとはイタリア語で「AL DENTE」と書き、直訳すると「歯で」。DENTEは「歯」、ALは「〜で」、という意味です。 パスタは歯応えをわずかに残すくらいに茹でるのがおいしく、「アルデンテ」は、茹で加減を表す際によく使われる言葉です。パスタに限らず、米や野菜を茹でるときにも使われます。 |
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「達人対主婦 いったいどこが違うのか?」一般の主婦たちとパスタの達人で「パスタコンテスト」を行い、基本中の基本「ミートソースのパスタ」を作ってもらいました。麺(1.7ミリ、9分茹で)とソース(缶詰)は同じものを使ってもらったにもかかわらず、達人のパスタは麺とソースが絶妙に絡み合う究極のおいしさになったのです。 主婦と達人の麺の茹で時間を比べてみました。100点満点の65点と、主婦の中では最も評価の高かったベテラン主婦の茹で時間は7分35秒でしたが、達人は7分45秒で、わずか10秒の違いでした。この10秒が重要なのでしょうか? それとも何か他の理由があるのでしょうか? |
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「パスタはどうやってできるの?」まずはパスタをよく知ろうと、パスタ工場を訪ねました。そこで2つのことがわかりました。
それぞれの物性が、パスタならではの歯応えある食感を生み出していたのです。 パスタの食感の正体は?アルデンテに茹でられたパスタの断面を顕微鏡で見てみました。すると、元は粒状だったデンプンが、表面に近づくにつれ、糊状になっていることがわかります。 デンプンに水と熱が加わることで起こるこうした化学変化を「糊化(こか)」といいます。このように段階的に糊化が起きると、外側から内側に向けて「ふわっ」「モチッ」「きゅっ」という歯応えのある食感となるのです。 達人のパスタはどう違ったのか?一方、達人のパスタは外側から内側に向けて「うまふわっ」「モチッ」「きゅっ」となっています。その最大の特徴は、麺にソースがしみ込んでいることです。顕微鏡カメラで見ると、挑戦者のパスタとの差は歴然としていました。 その理由を達人に聞いてみると「パスタの小麦粉が口を開けるタイミングを見逃してはいけない」との意外な答えが返ってきました。これはどういうことなのでしょうか? 実は達人のパスタの周辺部分は、一時的にパスタとは一見何の関係もない「ある食品」と似た状態になっているのです。さて、小麦粉から作られる「ある食品」とは? |
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「達人のパスタによく似た食材とは?」小麦粉から不思議なものを作る人がいるということで、金沢の「ある食品」を作っている工場を訪ねました。小麦粉に水を加え、練っていくところまではパスタと同様ですが、何とこの工場では、パスタの主役とも言えるデンプンをあえて水に溶かし、逃がしてしまっていました。 デンプンを逃がすことでできるこの食品は、麩(ふ)でした。麩の最大の特徴は、まわりのソースを吸い込む「スポンジ効果」です。 驚くべきことに、達人のパスタの周辺部は、一時的に「麩」の状態になっていて、だからこそソースを吸い込んでいたのです。このタイミングこそが達人がいう「小麦粉が口を開ける」という意味で、これを生かして作る達人のパスタはまさに究極! では、達人はどうやって小麦粉の口を開けさせたのでしょうか? |
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「最大のカギは麺とソースを和えるときの温度だった」達人と主婦のパスタ、それぞれの作り方を改めて科学的に比較してみました。すると、茹で時間は10秒しか違わないにもかかわらず、仕上がりの麺の温度に20℃もの差があったのです。
なぜこのような違いができたのでしょうか? 主婦は、7分35秒、麺を茹で、麺を皿に盛ってからあらかじめ温めておいたソースをかけていました。一方達人は、7分45秒、麺を茹で、麺をソースを温めている鍋に直接入れ、規定の9分まで和えていました。最も大きな違いは、麺とソースを和(あ)える時の温度だったのです。 温度の違いでソースのしみ込み具合が変わる理由パスタの主成分はデンプンとグルテン。茹でる前は、デンプンはグルテン同士が作る網の中に閉じこめられ、動くことができません。しかしパスタを茹でていくうちに、デンプンは膨張して糊状になり(糊化)、自由に動くことができるようになります。すると、それまで密だったデンプンの間に隙間ができます。これが、達人が言う「小麦粉が口を開き始めた」状態です。ここまでは、達人も主婦も同じ調理法です。 達人は、このタイミングを生かし、デンプンの隙間にソースをしみ込ませることに成功しました。一方主婦は、このタイミングを生かせず失敗してしまいました。 その理由は、麺をザルに移したり皿に盛っているうちに冷めてしまったためです。冷めると、一度糊化したはずのデンプンが、べっとりとパスタの表面を覆い、ソースを拒絶するかのような状態となります。ソースをいくら絡めようとしても“あとの祭り”というわけです。 ミートソースのパスタの鉄則※9分茹で、1.7ミリのスパゲッティの場合
この鉄則は、ソースを和えるタイプのスパゲッティならば幅広く応用できます。 |
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「茹でるときの水と塩の量 大調査」パスタを作る際、どのくらいの水と塩を使っているか、一般の人20人を対象に実態調査をしました。一般的に、パスタは水に対して1%の塩を加えた湯で茹でるのが必須とされています。その割合を「黄金比率」と呼ぶ専門家までいるほどです。しかし、実態調査の結果、使っている水の量が各々の感覚とは大きく異なり、皆一様に薄い塩水になってしまっていたことがわかりました。 なぜパスタを茹でる際に塩が必要なのか?いくつかの理由が考えられますが、有力なのは「パスタ自体に塩がのっていることで、ソースと麺が絡みやすくなるため」。パスタ(乾麺)には元々塩が入っていないため、塩分濃度の濃いソースとは絡みにくいのです。 これに対して、食塩水で茹でることによって麺に塩をのせておくと、ソースと麺の塩分濃度の差が小さくなるので、ソースと麺が絡みやすくなるのではないかと考えられています(現時点では仮説)。その他、麺に下味がつくなどの利点もあります。 パスタを茹でる際に中華鍋を勧める理由中華鍋は底が丸い形状をしているため、底が平らな大鍋と比べても使う水の絶対量がおよそ半分になります。水の絶対量が半分になると、必要な塩の量も半分になります。さらに、湯を沸かすための時間も、燃料費もおよそ半分で済むという数多くのメリットがあります。 |
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実習コーナースパゲッティボンゴレ(2人分)
しそとバジルのペーストスパゲッティ(2人分)
ブロッコリといり卵あえスパゲッティ(2人分)
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