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2007年11月06日(火) 21:44

だれが「音楽」を殺すのか?

ぼくは、音楽が好きです。
これまで、数多くの音楽を聴いてきました。
そして、数え切れないほどの感動を、音楽からもらってきました。
今のぼくがあるのは、音楽の影響がとても強いです。
昔、こんなphraseを考えたことがあります。

書籍でぼくの骨格は作られ、音楽がその骨に肉付けしてくれた。
このあと、その身体へ魂を吹き込んでくれたのは・・・、と続くのですが、恥ずかしいので割愛。
つまりそれくらい、ぼくの人生にとっての音楽は、重要なものなのです。

音楽嗜好がminorなものになるにつれ、ある一つの不満が常に付きまとう事になりました。
そう、廃盤です。
real timeで知り、聴いているのなら、それほどの問題にはなりません。
けれど、知った時にはすでに、旧作の殆どが廃盤になっていることが多々ありました。
具体的に言えば、biceさんの作品とか。
Amazonで検索すると、どんな状況なのか一目瞭然です。
もしくは、Swinging Popsicleの作品。
個人的に、最高傑作だと思っているFennec!が、あっという間に廃盤にされた事。
(なお、その後この作品は、インターネットで配信されています。)
こういう事が続いたせいで、レコード会社って最悪と思うようになりました。

ぼくは基本的に、芸術家はその存在だけで無条件の礼賛に値する、と思っています。
なので、著作権というものは必然であって、最大限尊重するべき、と思っています。
ところが、インターネットという文化に触れ、それも怪しくなってきました。
理由は、結局、著作権って誰のためにあるんだろうという疑問が湧いたからです。
その切っ掛けとなったのは、この記事でした
なんだそりゃ、と。結局、著作権って芸術家を守ってないんじゃないか?と。

そこから、よく分からない著作権について、いろいろと調べるようになりました。
そして辿り着いたのが、本書の著者である津田大介氏のSiteでした。
非常に分かり易くて、とても勉強になりました。

本書が発売されたのは、2004年です。今から3年前。
けれど、本書の価値はまったく変わっていないな、と読んでいて何度と無く思いました。
本書の価値は、著作権というものの本質を、明確にかつ分かり易く書いている事にあります。
調べてみると分かるのですが、著作権というのは、その仕組みが非常に複雑です。
だから、その本質が掴みにくく、何が問題なのかが分かり難い。

本書は、具体的な物事を取り上げ、そこを切り口にして数々の側面を見せてくれます。
読んでいて、身近な事件が沢山出てくるので、実感としてそれらを捉える事が容易です。
また、津田氏の文章が洗練されているため、すらすらと読み進む事が出来るのも大きいです。

さらに、数々の年表やDataといった資料が多いのも素晴らしいと思います。
具体的な数字を見る事で、客観的にその物事を判断する事が可能になります。
年表を辿る事で、実際の流れを俯瞰してみる事が出来ます。
これらのDataを自分で調べようと思うと、非常に手間で面倒な事柄なので貴重なものです。

あとがきで書かれている事を引用します。
10年後ぐらいにこの本を読んだ人が「あの頃の音楽業界はこんなくだらないことで悩んでいたんだね」と笑いながら感想を言える事を願って。
これ、読みながらぼくが感じていた事そのものだったので、思わずにやりとしてしまいました。

今、著作権を囲む状況は、一つの局面を迎えようとしています。
何が正義で、何が悪か。
それを決める基準は、法治国家である以上、以外にはありえません。
そしてとは、その文化圏に属する人すべてに関係する重大な物事であるはず。
再度あとがきから、津田氏の言葉を引用します。
批判したいヤツはすればいい。だけど、きちんとした知識や事実認識なしに的はずれなコメントしても、それは自己満足のガス抜きにしかならない。今の音楽業界のことをクソだと思ってて、その状況を何とか変えたいなら、ニュースの背景にどういう問題が横たわっているのか、きちんと勉強するべきだ。踏まえておくべき事実や認識が多ければ多いほど、音楽業界に関する議論は実りあるものになるはずなのだから。できるだけ多様な視点、認識を持ち、それを最大限活用して議論すれば、もしかしたら新たなソリューションが生まれるかもしれない。今の音楽業界には反対意見も含めた建設的な話し合いの中から何かを産み出していく作業が圧倒的に足りないんじゃないかと思う。
とても真っ当な意見で、気持ちが良いです。
津田大介という人は、本当の意味でのjournalistだな、と思うのはこういう部分です。
氏が扱っている分野において、非常にbalanceが取れていると思うからです。

繰り返します。
ぼくは、音楽が好きです。
だから、今の状況を何とかしたいと思います。
その観点から見て、この本は非常に大きな価値を持っていることは確かです。
読んでいて、非常にためになったと思います。

さて、あなたはどうしますか?