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マリード[同和行政オブザーバー]

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2003年 8月 29日

市職員の家賃滞納問題で監査請求




 長らくご無沙汰しております。7月22日に京都市同和補助金調査委員会の最終報告と、不正行為に関係した市職員の処分が発表されましたが、調査内容はともかく、処分のいい加減さに寝込むほどショックを受けてしまい、発行が滞ってしまいました(半分本当です)。

 いつまでも寝込んでいるわけにもいけませんので、そろそろぜんまいを巻き直すことにいたします。

 8月28日、市民ウォッチャー・京都(市民オンブズマングループ)のメンバー4人が、京都市監査委員に住民監査請求を行ないました。

 京都市の改良住宅(同和対策として建設した市営住宅)に入居している京都市職員が家賃を長期滞納していることを、京都市が黙認しているのはけしからん、市長は家賃滞納市職員に支払いと部屋の明け渡しを求める訴訟を起こせ、というのが、その内容です。
 →住民監査請求書全文(添付資料含む)
 →京都新聞の報道

 昨年11月の議会に都市計画局が報告したところによると、3か月以上家賃を滞納している市職員は99人、10年以上も滞納しているのが11人もいるのです。公務員という安定した収入を得ておいて(住居手当も1万円余りもらっている)、公営住宅の家賃が払えないということはないでしょう。かれらは払うつもりがないのです。あるいは払わなくても許されると思っているのです。

 事実、市職員に限ったことではありませんが、つい最近まで、何十、いや何百か月家賃を滞納しようが(ひどいケースは30年以上ためていた)、京都市は明け渡しを求める措置(訴訟、強制執行など)をとることもなかったのですから、「許される」と思うのもむりもないかもしれません。

 一般の市営住宅の場合、京都市は1年滞納をめどに明け渡し訴訟を起こしていますから、「同和」特別扱いは明白です。

 わたしはこの問題をこれまで何度も取り上げてきましたが、行政、滞納者個人の問題ももちろん重要ですが、もっとも深刻に受けとめなければならないのは、運動団体だと思います。これほど部落の悪イメージをかき立てるものはないでしょう。

 既得権確保に奔走したり、補助金を騙し取って、リゾート地でマージャン、ゴルフ、夜はコンパニオンと大宴会に興じることが運動なのではなく、長年の行政依存というか、同和特別扱いを当然視する住民の意識と生活の歪みにこそ、運動は取り組むべきだと思うのですが、かれらはこういうことにはまったく無関心です。

 部落解放同盟の5月の全国大会で、松岡書記長は、われわれ『同和利権の真相』執筆者グループを、「彼らは、部落問題の解決に、まったく責任をもっていない。こうした人物にまともに対応する必要はない」と批判していますが、こういった非常識な実態への取り組みを放棄しておいて、いったいかれらはどんな責任をはたしているというのでしょうか。

 かつて、上杉佐一郎元解放同盟委員長はこんなことを言っていました。
上杉──それで、先ほどいわれた主体性の問題ですが、「同和」対策事業での個人給付の焦げつきの問題について攻撃がありますが、むろん借りたものは返すことは当然です。しかし、行政の主体性も問われる必要がある。貸した者が催促する、取りに行くのは当然でしょう。これは行政の責務でしょう。ところが、十年も十五年もやってこなかった。このことは行政の主体性のなさでもあるし、裏返してみると差別ではないのか。

稲積(謙次郎。西日本新聞編集局長=当時)──そうなんです。

上杉──催促をしない、取りにも行かないのは、「部落民だから押しかけられるのではないか」という意識があったのではないのか。部落外ならそういうことはしないでしょう。ちゃんと催促するでしょう。われわれも努力しますが、行政も催促するなどの責務をちゃんと果たすという面も強調していい。
(上杉佐一郎対談集『人権は世界を動かす』1991年、解放出版社)
 解放同盟外の人間がいった言葉ならまだ容認もできましょう。しかし上杉氏に許される言葉ではない。行政の主体性を認めてこなかったのはいったいだれか。解放同盟に協力することが行政の責務だと言い続けてきたのはだれか。自分たちがやっていたことは棚に上げて、都合の悪いことは全部行政のせい、社会のせい、部落差別のせい、ということなんでしょう。



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