国立劇場で39年ぶりに通し上演中の「摂州合邦辻」(山田庄一補綴(ほてつ)・演出)で、坂田藤十郎が主役の玉手御前を東京では初めて演じている。
大名の後妻の玉手は義理の息子の俊徳丸(三津五郎)に恋し、婚約者の浅香姫から引き離すために毒酒を飲ませて相貌(そうぼう)を崩す。怒った父の合邦(我当)に刺された玉手は死に臨み、俊徳丸をお家騒動から守るための偽りの恋であったことを明かす。
「武智鉄二先生の演出による初演(1951年)では、セリフの勉強のために文楽の(先代)竹本綱大夫師匠のところにうかがいました。師匠は『玉手は心底で俊徳を好きでないといけない』とおっしゃいましたが、私もそう思います」
親子とはいえ、玉手も「19や20歳」と詞章にもある若さだ。「俊徳が大好きであこがれていた。晴れ晴れした気持ちで死んでいく玉手の哀れさと喜びをお客様にも感じていただきたい」。26日まで。問い合わせは同劇場チケットセンター(0570・07・9900)へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2007年11月5日 東京夕刊