サイトID | トップ | EASとは | サプリメントの選び方 | eBodyジャーナル | サクセスストーリー | サプリメントレシピ |



eBody Journal

2003.06.16 vol.18


- 目次 -   
コラム Cutting Edge  「肉体改造のきっかけ」 (今月から筆者が代わりました)
Q&A  トレーニング、サプリメント、栄養摂取に関するQ&A
「変わりたいと思えば、人は変われるものです」ほか
サプリメント最前線  サプリメント講座
「脳の働きをより良くする栄養素 最終回」
That’s トレーニング  トレーニング講座
「部位を際立たせるトレーニング(背中編)」
Feature 

「音楽のさまざまなメリット」


コラム

Cutting Edge…


「きっかけ」
新しく物事を始めるときは必ず「きっかけ」となる何かが存在する。それは偶発的で衝撃的な出来事であるケースもあれば、前々からじわじわと溜まっていたものが限界にまで達して爆発するというケースもある。肉体改造においてその「きっかけ」は人それぞれであるはずである。強くなりたい、カッコ良くなりたい、綺麗になりたい、自分を変えたい、何かを達成したい、などなど。それが何であるか自体は全く重要ではない。重要なのはその「きっかけ」となった思いを自分自身が明確に意識し、どれだけ強いままにそれを維持させることができるかである。

私の場合、「きっかけ」は「アメフト選手としての能力低下」であった。大学時代から始めたアメリカンフットボールで学生・社会人リーグでそこそこ活躍し、選手として自信を持って楽しくプレーしていたはずが社会人4年目(27歳時)のシーズンに早くも「衰え」を感じてしまったのである。自分では「気持ちの問題だ」とか、「時期的にスランプなんだ」などと言い聞かせようとしたが、やはり自分は騙せない。数字はもっと正直で、シーズン終了後の体力測定では40ヤード走のタイムが落ちるばかりか、10%を維持していた体脂肪率が16%にまで上昇していた。数字の低下はこの際どうでもよかった。許せないのは「ゲームにおいて相手をオーバーパワーできないこと」であった。

「これはマズい、何とかしなきゃ」と思うものの、「何をどうすればいいのか」が分からなかった。そんな時、当時コーチとしてチームに携わっていたドーム代表取締役 安田の肉体改造体験談を思い出す(安田と筆者との関係は今の「社長=社員」ではなく「コーチ=主将」)。おそらく安田は私が改めて真剣に相談に行くその時までに何度もそのような話を私にしてくれていたのであろうが、それまでは自己流で上手くやってきているつもりであった私の耳には完全に右から左であった。実際私はそれまでの選手生活の中で、食事にそれほど気を使うこともなく(もちろんサプリメントも無摂取)、ウェイトトレーニングは「人並みにやっているつもり」という程度であった。

そんな私にとって、シーズン終了後の12月に訪れたドームオフィスでの安田の話はまさに衝撃であった。もちろんそれまでにも何度かはトレーニングの話や栄養の話を聞いたことがあったが、「全てが論理的である」という点において全く違っていた。カロリーの話、たんぱく質・炭水化物・脂肪の話、食事回数の話、クレアチンの話、有酸素運動・無酸素運動の話、などなど、興味深い話が次々と登場し、しかも全ての論点において科学的な裏付けが確立されている点が信頼性を高めていた。そして何よりも話している安田が半年前に実際に「体験している」ということが、私のモチベーションをMAX値に至らしめることになった。

その場で安田が買い溜めしていたEASマイオプレックスEASフォスファジェンHPDNSホエイプロテインG+の3点を無理やり購入。寮に戻り早速トレーニングに勤しんだこの日が、私の肉体改造の第一歩となったのである。モチベーションが変われば人間変わるもので、この日のトレーニングではかつてないほど自分を追い込むトレーニングができた。もちろんその根底には「身体を鍛え直して、来シーズンは相手を完全にオーバーパワーしてやる」という強い意志があった。最終的にはこの日、追い込みすぎてゲロを吐くまでに至ったのであるが、このゲロがなんと気持ちのいいゲロであったことか... 過去にもそれ以降にもそのような「気持ちのいいゲロ」は経験したことがないため、今でも自分の分岐点の記憶として鮮明に思い出すことができる。

私の思う成功のポイント
・ 「きっかけ」の認識およびその気持ちの維持
・ 適切な情報収集

さて、今回は私の「きっかけ」について話したが、次回からは私の実践した「トレーニングプログラム」および「栄養摂取プログラム」についてお話ししよう。



Q&A

変わりたいと思えば、人は変われるものです


  私は今の自分の外見や気持ちが嫌になります。しかし一方で、実際にライフスタイルを変える気にもなりません。現状でも沢山のプレッシャーやストレスあるのです。とても混乱しています。どうすれば良いのでしょうか?

多くの人に共通する矛盾ですが、人は今の自分から変わりたいと思いながらも、心のどこかで「このままでいいや」という気持ちがあります。しかし、両方を選ぶことはできません。トレーニング開始前の写真と終了後の写真を同時に撮ることができないのと同じことです。

 さて、それでは以下のとてもシンプルな質問に答えてみてください。これであなたの悩みは解決するはずです。「あなたは今進んでいる道を歩みつづけたいのですか?それとも、もっとより良い方向へ変えていきたいですか?」この質問に対して、「どちらも」とは答えられないでしょう。

 プレッシャーやストレス、またそれに伴う不安感などは、あなたの悩んでいるような「変わりたいけれど、このままでもいたい」という矛盾が原因になっていることが多くあります。もし決心をすれば、あなたは自分のために努力をしているのですから、ストレスも次第に解消されるでしょう。しかし、あなたが一向にどの方向へ向かうのかを決意できなければ、ますますストレスを感じることでしょう。

 決心するとき、これだけは覚えておいてください。まず、新しいことを始めるというのは決して簡単なことではないということです。楽に感じるまでには必ず大変な時期があるものです。トレーニングを始めることも例外ではありません。
そして、ふたつ目は、あなたが今のままでいいと決めた場合に、どんな未来が待っているかを考えてみてください。そして、自分を変えていこうと決心したら、12週間後の自分はどんな風になっているか想像してみてください。このままでいることのメリットは何でしょうか?そして、より良い自分に変えていこうとすることのメリットは何でしょうか?

 そして最後にもうひとつ。あなたが決意し、トレーニングプログラムを12週間続けて、美しくなり、気分が冴え、自尊心も高くなり、また、何故だか健康で強くなれたことを喜べなければ、それからもとの生活に戻ることだってできるのです。そうでしょう?

賢く食べて、長生きをしよう


正しい事を難しい状況で実行するのは難しい…

  栄養メニューを改善することで長生きができるというのは、科学的な研究で完全に立証されていることなのでしょうか?

死を招くような重い病気を予防するための栄養の効果に関するデータを除くと、現状、栄養の分野において、長寿の秘訣になると確証できる最も決定的、かつ具体的なデータは、数十年間に渡って行われたカロリー制限されたネズミやサルによる数々の実験結果です。
これらの研究によれば、平均より50%少なく食べることで、最高50%まで長生きできるということが明らかにされました。
長寿の動物を特徴づけるバイオマーカーは3つ挙げられ、@低体温、A血中のインシュリンレベルが低い、Bジヒドロエピアンドロステロンホルモンのレベルが高い、になります。

 また、「エイジングに関するボルチモア縦断的研究」の、エイジング国立研究所の研究者たちによる700人の健康な被験者のデータから、長寿の3つのバイオマーカーが人間の長寿の秘訣にも同じ作用があるという確証が得られました。
しかし、動物実験と違う点は、これらの被験者はカロリー制限のダイエットをしていないということです。彼らは平均的に1日2,300カロリーを摂取しています。
また、研究者達は彼らのバイオマーカーの存在については明白に言及していません。
 
 これによれば、断食ダイエットをしなくても、長生きできるような物質代謝を維持する方法があるということは明らかです。今後何年も多くのデータを集めていけば、長寿の秘訣は @何を食べ Aいくらエクササイズをするか という、2つのキーポイントになると私は確信しています。



サプリメント最前線

 「脳の働きを助ける栄養素」最終回です。前回で紹介しきれなかったものをまとめて解説していくこととします。
  • ビンポセチン

  • ビンポセチンはヒメツルニチニチソウと呼ばれるハーブの成分です。これは脳における血流を増加させ、脳が使えるブドウ糖や酸素の量を増やします。またアセチルコリンレセプターの活性を向上させ、神経伝達を速やかにしてくれます。
    さらに赤血球の変形能力を向上させます。脳の毛細血管は非常に細く、通常の形の赤血球は通り抜けることができません。そこで赤血球は細長い形に変化し、直径を短くして通り抜けようとするわけです。この変形能力向上により、赤血球はスムーズに細い毛細血管を通り抜けられるようになるわけです。
    またcAMPのレベルを上げる作用もあります。ホルモンや神経伝達物質が受容体にくっつくと、アデニル酸シクラーゼという酵素の働きによって、ATPがcAMPに変化します。cAMPはプロテインキナーゼという酵素を活性化し、これによりホルモンや神経伝達物質が本来の働きをすることができるようになるのです。

    実際、ビンポセチンはアルツハイマーに有効だとする知見や、高齢者の記憶力や空間知覚テスト、動作テストにおける成績を向上させたという研究もあり、その効果が証明されてきています。また、高齢者よりも若年者における知的能力向上効果のほうが大きいとした研究結果も見られます。
    特にアスリートのみなさんに重要なのは、反応時間の向上と視覚および聴覚の改善効果でしょう。一日に15〜20mgの摂取で効果が体感できるはずです。

  • ユビキノン(CoQ10)

  • テレビなどで紹介されて一躍有名になったユビキノン。これには大きくわけて2つの作用があります。一つは、いわずと知れた抗酸化作用。そしてもう一つは、ミトコンドリアの生産を促すことによるATP増産効果です。
    抗酸化物質の権威、レスター・パッカー博士によれば、ユビキノンは「細胞のスパークプラグ」。ユビキノンが無ければスパークが起こらず、エンジンの回転すなわち頭の回転数も上がらないというわけです。
    また、脳は脂肪から出来ているといっても過言ではないのですが、脂肪は容易に酸化されて過酸化脂質になってしまいます。これが脳細胞死滅の要因となっているのですが、ユビキノンはその抗酸化作用によって過酸化脂質の生成を防ぎます。さらに、同様の作用を持つビタミンEをリサイクルすることにより、二重に過酸化脂質生成を防いでくれます。

    従来は体内のユビキノンが加齢によって減少していくことは知られていましたが、外部からの投与によるユビキノンが脳内に達するかどうかは解かっていませんでした。しかし最近になって、中年になった実験動物にユビキノンを与えて脳組織を調べた実験が行われました。これによると、大脳新皮質におけるユビキノンの量が劇的に増加し、脳細胞中のミトコンドリアに集中的に存在していたことが確かめられています。
    実験開始後2ヶ月で、脳内ユビキノン値は30%上昇し、若い実験動物に相当するレベルにまで達したそうです。脳が若返った、と言い換えても良いくらいでしょう。
    摂取量は難しいところですが、一般には一日に30mg程度で充分です。しかし100mg程度の摂取によって、ミトコンドリア増産効果によりスタミナ(特に心肺機能)が格段に向上します。ハードな練習の日や試合の日など、朝食後にこれくらい摂取しておくと、普段より疲れにくい自分が発見できることでしょう。

  • アルギニン

  • アミノ酸のアルギニンが脳にも影響を及ぼすということは、初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。実際アルギニンは学習・記憶能力を高めたり、アルツハイマーの原因であるアミロイドの生成を抑えるなどの作用が確認されています。また、現時点では詳細は解かっていないものの、アルギニンにより作り出される一酸化窒素(NO)が神経伝達にかかわっているとも言われます。アルギニンからNOとシトルリンが作られるのですが、このときに働く酵素が、神経系に多量に存在するのです。おそらくは学習と記憶の向上についても、NOが神経伝達物質として働いているものと思われます。

    またアルギニンには強い血管拡張作用と血小板凝集抑制作用があり、脳の血流を増加させます。これにより酸素や栄養素の供給が多くなり、脳のエネルギーが増加することも考えられるでしょう。
    他でも述べましたが、NOは筋肉の衛星細胞のFusionを促すことによる筋細胞増殖を引き起こすため、筋肉の発達を願うアスリートにとってアルギニンは重要な栄養素となります。もちろん他にインスリン増強作用、成長ホルモン分泌作用なども期待できます。なおグリケーション(後述)を抑制する効果もあります。

    ただしアルギニンの摂りすぎは問題です。ヘルペスを増殖させるほか、それ自体がスーパーオキサイドを産み出したり、酸素と化合することによってヒドロキシルラジカルを生成したりしてしまいます。
    一日21gまでなら安全だとする報告もありますが、実際に効果の見られる一日量として3〜6g程度に抑えておいたほうが安心できるでしょう。パウダータイプのものが経済的ですが、非常に味が悪いため、カプセルタイプにしたほうが無難かもしれません。

  • カルノシン

  • カルノシンは筋肉や眼球の水晶体に多く含まれるアミノ酸が二つ繋がったジペプチドですが、最近になって脳にも多く含まれることが解かってきました。ラットの実験によればカルノシンは脳の活性酸素による傷害を防ぎ、また神経細胞の保護作用を持つことが明らかになっています。
    また抗酸化物質としての作用もあり、過酸化脂質生成の抑制や一重項酸素の除去などを行います。
    大食をする方は血中の糖分が多くなってしまうのですが、その状態が長続きすると変形した糖分にタンパク質がくっついてしまうことがあります。これをグリケーションと言って、生体にかなりの悪影響を与えていきます。悪影響の一つには、グリケーションを起こしたタンパク質中にカルボニル基が生じ、さらにそれらが重合してアミロイドタンパクを作り出すことが上げられます。
    カルノシンには、グリケーションを起こしたタンパク質にくっついて、それがカルボニル基を生成するのを妨げる作用があります。大食をされない方でも、糖尿病家系が疑われる場合はカルノシンの摂取を考慮してください。
    カルノシンのサプリメントもありますが、実は鶏肉に多く含まれます。胸肉などは皮を取れば脂肪も少なく、大量のカルノシンが入っているため、積極的に食卓に取り入れるようにしましょう。
     
    脳に悪い栄養素など
    さて、脳に良い栄養素・サプリメントについて3回に渡り解説してきましたが、最後に「脳に悪い」栄養素について簡単に触れておきましょう。
    まずは何といっても「飽和脂肪」です。私たちが何かを記憶しようとするとき、神経の樹状突起がだんだん伸びていきます。しかし、飽和脂肪を多く摂取していると、神経細胞の拡張が妨げられることがわかってきています。実際に高飽和脂肪食を与えられた実験動物は記憶試験で低い成績しかあげることができず、樹状突起の数は少なく、長さも短いことが確認されています。

    次に「砂糖」です。血糖値やインスリン値の異常が脳に多大な影響を与えていることは疑いの余地が無く、血糖値が高い糖尿病の児童はIQが低いことが知られています。一時的に(食後など)血糖値が高くなるのは問題ないのですが、慢性的な高血糖や高インスリンは危険であり、痴呆症(全般的な知能の低下)やアルツハイマーの進行を促進すると言われています。
    また、ある研究によれば砂糖を与えつづけられたラットは、同量のカロリーをデンプンから与えられたラットよりも寿命が短いことが確認されています。こういった悪影響は、前述のグリケーションによるものが大きいのでしょう。
    なおイスラエルで行われた実験によれば、果糖の摂取が砂糖よりもさらに大きな悪影響を及ぼすとされています。果糖は加工食品やソフトドリンクに多く含まれますので、ラベルを良く読んで食品を選ぶようにしてください。
    もちろん週に3〜4回、トレーニング直後のインスリン感受性が高い時に吸収の早い糖質を摂るくらいなら問題はありませんが、日常的に甘いものを良く食べるような習慣がある人は注意してください。特に糖尿病家系の人は今すぐにでも習慣を正すようにしたいものです。

    最後に、喫煙の習慣がある人は禁煙することです。喫煙がスタミナを奪うことは良く知られていますが(一酸化炭素がヘモグロビンと結びついてしまうため)、血管縮小作用や血栓形成作用により、脳の血流が悪くなることも重要です。ニコチンにはアセチルコリン受容体の一種と結びつく作用があるため、一時的に覚醒作用が現れますが、だんだん逆に、ニコチンを入れないと頭が働かないようになってしまいます。
    アセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼという酵素によって簡単に分解されますが、ニコチンはなかなか分解されず、受容体に長く居座ってしまいます。そしてアセチルコリンよりも遥かに強い刺激を受容体に与えつづけるため、喫煙を続けていると受容体の感度が鈍くなってしまうのです。

これで脳に関する栄養素、サプリメントについての話は一区切りつけるとしましょう。難しい用語が多くて困った方も多いかもしれませんが、面倒だからと読み飛ばしてしまうようでは、既にアナタの脳は老化しています。
ウィトゲンシュタインという言語哲学者によれば、「私の世界の限界は、言語の世界の限界である」。つまり知識を広げるほど、自分の世界が広がるということです。人生は短く、そして一度きり。常に知識欲、好奇心を持ちつづけて少しでも自分の世界を広げる努力をしていきたいものです



That’s トレーニング


部位別トレーニング編、今回は「背中」となります。前回までは胸や肩、腕など目につきやすい部位でしたが、これらの筋肉は別名「ミラーマッスル」と呼ばれます。鏡に向かって確認しやすい筋肉とでもいった意味ですね。自分の目でよく見えるぶん、それらを重点的に鍛えたくなるものです。

しかし、周りの人たちは私たちを前からだけではなく、後ろからも見ています。引き締まったウェストから広がる逆三角形の背中は、非常に強いアピールポイントとなるでしょう。

また、胸のように身体の前の筋肉だけを鍛えていると、姿勢がどんどん悪くなってしまいます。背中の筋肉群をしっかり鍛え、背骨や肩甲骨を正常な位置に保つようにしていきたいものです。

★種目の選び方

さて、背中の筋肉は他の部位に比べて複雑にできています。大雑把に分けても、

  • 肩甲骨を動かす筋肉(僧帽筋や菱形筋)

  • 腕を後ろや下に引く筋肉(大円筋や広背筋)

  • 背骨を安定させる筋肉(脊柱起立筋群)

少なくとも、この3つで考える必要があるでしょう。ただしここではあくまでも「見栄え」重視ですので、逆三角形を形づくるのにポイントとなる大円筋、そして広背筋をメインに考えていくこととします。

ジムに入会した人が初めてやらされる背中の種目としては、ラットプルダウンが代表的なものでしょう。このときに手幅は肩幅よりも広くするように指示されるはずです。
しかし、背中の筋肉(この場合は大円筋や広背筋)をストレッチさせるためには、手幅は狭くしなければなりません。ですから肩幅より狭いナローグリップの方が、本来は有効となるはずです。

ただし背中の筋肉は集中して効かせることが難しく、どうしても腕の力を使ってしまいがちです。手幅が狭いと、より腕の力を使いやすくなってしまいますので、結局は背中への刺激が弱くなってしまったということになりかねません。

ある程度トレーニング経験のある方だったら、背中のエクササイズとして「上から引く」種目と「前から引く」種目があることはご存知でしょう。そして一般的には、上から引く種目の方が腕の力を使いやすく、前から引く種目では腕の力はあまり使われずに済みます。
となると、上から引くプルダウン系の種目では広いグリップで、前から引くロウイング系の種目では狭いグリップでやれば効率的だということになるでしょう。

■プルダウン系種目の注意点
プルダウン系の種目ですが、これは自然な関節角度を考えて、フロント(首の前)に引くようにすべきです。首の後ろに引くように薦めるところもありますが、関節に不自然なばかりか、背中よりも肩の後部に効いてしまう可能性が強くなります。
手幅は肩幅よりも二握りくらい広くとり、親指を他の指と同じ方向におくサムレスグリップで行います。そして小指と薬指の力を主に使い、中指と人差し指の力は抜くようにします。そうすると、腕の力をあまり使わず、背中の筋肉に集中的に効かせることができるようになります。

ある程度力がついてきたら、懸垂(チンニング)に挑戦してみましょう。こちらの方が筋繊維数を多く使い、効果が高くなります。体重で10回できるようになったら、腰にウェイト(ダンベルなど)をぶらさげて負荷を加えていきます。

■ロウイング系種目の注意点
次にロウイング系のエクササイズですが、腰への負担やエクササイズの容易さから考えて、ロープーリーを用いたプーリーロウイングをお勧めします。手のひらが向かい合ったナローグリップハンドルを使い、ヘソのあたりに引くようにします。これもサムレスグリップで行い、小指と薬指を意識して動作を行いましょう。
腰の力を使って反動をつけたりせず、腰〜みぞおちにかけては常に地面と垂直な状態をキープします。そしてみぞおちから上、つまり肩甲骨から肩にかけてを前後に動かしてストレッチ→収縮の動作を行ってください。

■その他の種目について
以上の2種目がメインとなるわけですが、僧帽筋や脊柱起立筋も刺激しておきたいところです。これらをいっぺんに鍛える種目として、トップサイドデッドリフトをお勧めします。普通のデッドリフトは床から引きますが、このトップサイドデッドリフトはパワーラックのセーフティバーなどを使い、膝の皿下あたりがスタートポジションとなるようにバーをセッティングして、そこからスタートするものです。

可動範囲を制限することにより高重量が扱えますし、背骨の自然なアーチをキープしやすくなります。かかとに重心を置いてハムストリングスと臀部の力で下半身を安定させるようにしてください。動作中は股関節の屈曲・伸展を意識します。
手幅はやや広め。バーを持ち上げながら胸を張り、トップポジションでは肩を後ろに引いて肩甲骨を寄せます。これにより、僧帽筋や菱形筋への刺激も得られるようになります。
当初は脊柱起立筋への刺激が一番感じられると思いますが、だんだんフォームが固まってくるに従い、ハムと臀部で上手にウェイトを支えられるようになります。すると、むしろ僧帽筋や菱形筋、さらに大円筋までに刺激が移行してくるのが感じられてくるでしょう。

■プログラミングの実際
さて、具体的なプログラムを考えていきましょう。広背筋や大円筋を重視する以上、最初に来るのはプルダウンかロウイングです。このどちらを最初にするべきでしょうか?
前述したとおり、プルダウン系のほうが腕に効きやすくなっています。となると、先にプルダウンを持ってくるとロウイングの時に腕が疲れてしまい、最後までウェイトを引ききれなくなる可能性があります。

また、プルダウン系では広背筋よりも大円筋への刺激が強い傾向にあります。先に大円筋がパンプアップしてしまうと、ロウイングの時にバーを後ろに引きにくくなることもあります。まぁこれは筋肉量の多いベテランの話ですが…

以上より、先にロウイング、次にプルダウン。そして最後にトップサイドデッドリフトで仕上げるというプログラムとなります。

 

背中のモデルプログラム

 
  1. ロー・プーリーロウイング: ウォームアップ2セット+メイン2セット
  2. フロント・ラットプルダウン: メイン2セット
  3. トップサイドデッドリフト: だんだん重量を増やしながら回数を減らし、トータルで4セット 

ロウイングとプルダウンはレップス数8〜12としますが、デッドリフトは軽い重量で15回くらいから開始し、12回、10回、8回とだんだん重量を増やしながらレップスを減らすようにしていきます。フォームが難しく、多くの関節を使う運動ですので、最初のうちはこのような形で行ったほうがよろしいでしょう。
ある程度筋力がアップしてきたら、前述したとおりプルダウンをチンニングに変えていくようにしてください。

背中の筋肉は脚についで大きな筋肉です。これを鍛えることによって筋肉での体重を増やすことができますし、姿勢も良くなってきます。アスリートには必須の筋肉ですし、見栄えも良くなる。これからはミラーマッスルだけでなく、背中の筋肉にも注意を向けるようにしていきましょう。



Feature

音楽の様々なメリット

ウェイトトレーニングに関わる要素はバーベルやダンベルだけではない。スポーツをする際、精神面は根本的なレベルにおいて、身体面と同じくらい、またそれ以上に重要である。モチベーション、意欲、集中力、ひたむきさは、クレアチンやフォスフェイト、ATP、TCAサイクルインタミディエートには含まれない要素である。しかし、この要素は体作りをする上で、成功するか失敗するかを左右するほどの要素でもある。

トレーニングにおいて、メンタルな意欲を駆り立てるには多くの要素がある。その多くは自分のコントロール能力ではどうにもできなかったり、そのときの状況や生まれつきの遺伝子構造に左右されたりする。しかし、方法がないわけではない。様々な研究で、エクササイズ中に音楽を聞くことにより、持久性があがったり、ムードを盛り上げたりするなどのメリットについての研究が行われているのである。

 ハムデン-シドニー大学のRobert T. Herdegen博士とJonathan D. Meeks博士の新しい研究によると、エクササイズ中に好きな音楽を聞いている人は、「つらい」いう意識が低く、そのため音楽を聴かないでエクササイズをする人に比べて、よりハードなエクササイズができる。

 この研究の中で、12人の男子大学生に10分間全速力で自転車に乗ってもらう実験を行った。まず、一日は何も聴かずに乗ってもらい、別の日にはそれぞれ好きな曲を聴きながら乗ってもらった。そして、もう一日はラジオの雑音を聞きながら乗ってもらった。この実験の結果、音楽を聴いていた方が、何も聴かない、また雑音を聞いていた日と較べて、11%も距離が伸びたのである。さらに、学生に「つらさ」のレベルをランク付けしてもらったところ、音楽を聴きながらというのが最もきつくないとの回答になった。

 現在、なぜ音楽の効果について議論が繰り広げられている。多くの研究者は、音楽のリラックス効果がパフォーマンスを高めるのにも役立っているのではないかと考えている。また、別の理論として、音楽を聴くことにより、単にエクササイズのつらさを紛らわせることができるからという可能性も唱えられている。つまり、つらさを意識しなければ、人はそのエクササイズに不快感を感じることがないので、スローダウンしたり、やめてしまうことが少なくなるということである。

私の考えでは、音楽にはそれ以上に何かがあると思う。ウェイトトレーニングの際、私は適切な音楽を聞くことによりやる気が起こり、それがモチベーションとなってもっとハードに、そして長時間続けることができる。また音楽を聴くことにより、集中力が増し、周りのおしゃべりや行き来する音などの雑音などが気にならなくなる。

 一方で、特殊なケース、特にエアロビクスなどでは、音楽が刺激になると同時にリラックスさせてくれると感じる。だからあの単調な動作にも耐えることができるのである。




●● 編集後記 ●●
今月からコラム執筆担当が代わりましたが、いかがでしたか?
『肉体改造』というゴールは同じでも、そこに至るには人それぞれ、様々なストーリーがあります。
『肉体改造のきっかけは、eBody Journal !』というストーリーも・・・
来月号もご期待ください!

また、「eBody journal」では皆様からのご意見、ご感想をお待ちしております。お問い合わせ先 ej@domecorp.com


バックナンバー
第42号(最終号)
第41号
第40号
第39号
第38号
第37号
第36号
第35号
第34号
第33号
第32号
第31号
第30号
第29号
第28号
第27号
第26号
第25号
第24号
第23号
第22号
第21号
第20号
第19号
第18号
第17号
第16号
第15号
第14号
第13号
第12号
第11号
第10号
第9号
第8号
第7号
第6号
第5号
第4号
第3号
第2号
創刊号


copyright 2007 DOME Corporation All Rights Reserved.

eBody は EAS 社の日本総代理店である株式会社ドームが、EAS 社よりロゴ等の使用許可を得て独自に開発・運営しており、
eBody に関する一切は株式会社ドームに帰属します。